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2006年04月08日

「かもめ食堂」とレシピ詩集

今日は春の嵐の一日。晴れた空が一瞬曇り、雨が降り、突風が吹く。雹が降ったところがあるかもしれない。「花に嵐」のたとえ通り、歩けば花吹雪である。このような中で映画「かもめ食堂」のことを書くのはすこし難しい。場所はフィンランドのヘルシンキ、気候風土がまったく違う感じだからである。だからこの日本の現実から離れて、映画の世界に、一気に飛び込むことにしよう。

これを見たのは、すこし話題になりかけた頃だが、書く機会をなぜか逸してしまっていた。なぜなら美味しいものを食べた後の満足感のようなものがあって、あれこれ喋る必要がないように感じたからである。とにかく気持ちがよく、気分がさわやかになり、豊かな森とカモメの舞う港町と青い空、すがすがしい大気の中でのんびり暮らす人々、その日常を感じるだけで十分な気がしたのであった。

日本女性のサチエが、なぜか一人で「かもめ食堂」を新規開店する。ガラス張りのシンプルで清潔な店構えだが、メインが3種のおにぎりというのが面白い(おにぎりは確かに美味しいですよね!)。もちろん他の料理もあるのだが、鮭の網焼き、豚のショウガ焼き、とんかつなど、日本の家庭料理である。それらが目の前で料理されるが、とにかく美味しそうで食べたくなる。
最初は訪れる人は誰もいない。しかし少しずつ興味を持って眺めて行く町の人も出て、また日本が好きな青年の登場など、ちょっとしたエピソードもあって、最後は満席になるという、その過程を淡々と描いただけのものであるが、そういう日常が、ゆったりとした時間の流れの中で豊かに暮らしているヘルシンキという町の人々生活とその空気を鏡となって写し出す。
女店主の小林聡美の他、片桐はいり、もたいまさこ、それぞれ個性的な俳優の組み合わせもよく、笑ってしまうシーンもあって、楽しい。女性3人だけの店というのも、今日の女性の生き方それぞれが背後に想像できて、これにも共鳴させられる。
「どうしてこの町の人は、ゆったりとした生活が送れるのでしょうか」というようなことをサチエが、青年に聞いた時、彼は言うのだった。「それは森があるからでしょう」と。それが心に残った。

それを見た頃、羽生槙子さんから『想像』112号が届いた。羽生さんは野菜作りを通して、環境問題から社会問題まで視野を延ばし、また実際の活動も地道になさって、いつも感服し、また畑の詩も楽しく読んでいるのだが、そこに友田美保さんが最近レシピ詩集といってレシピを詩にしたものをのせている。その一つをここに紹介する。

         酢みそ和え

  あたたかくなってくると
  ひんやりした 酢みそ和えが 食べたくなる。
  ちょうど わけぎが 畑で 育っている。

  わけぎをゆでて ワカメをもどし
  あおやぎを 魚屋で 買って来たら
  みそ さとう 酢 からしを ほどよくまぜ。
  わけぎとワカメとあおやぎを 和える。

  それに サワラの塩やきと
  菜の花のおひたしと
  フキノトウと入れた トウフのみそ汁。

  春の香りが するでしょう。

この詩も、読むと酢みそ和えが食べたくなる詩です。

投稿者 kinu : 2006年04月08日 17:24

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