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2009年09月23日
松虫の声を聞く
台峯歩きと同じ日の夕方、松虫の声を聞く会が開かれました。
6時集合。参加者は11人。蛍の時とは違ってまもなく日は暮れていきました。
はじめての参加です。果たして松虫はいるだろうか? またその声を私は聞けるだろうか? 一昨年は松虫の声は聞けず、皆で仰向けになって星を眺めて帰ってきただけだったとのこと、それで昼間歩いた時、Kさんは、いわゆる「老人の畑」で虫たちの様子を心配げに点検していたのでしょう。今年は先ず大丈夫だと言っていましたが・・・。
結論を先に言いますと、今年は当たり年だったそうです。幸運でした。私の耳も何とか松虫の声を捉えることが出来、その姿もちゃんと眺めることができました。蛍とは違い懐中電灯を向けても平気で逃げたりもしません。うるさいなあーというような顔をしているくらい。マツムシだけではなく、バッタ類、オンブバッタやショウリョウバッタ、それから眼の下に涙のような黒い斑点があるツチイナゴ(まだ若いのでバッタのように緑色で可愛らしい)、触覚が長いクサキリなど、こんな風に虫たちを眺めたことがなかったので、面白く楽しかったです。
マツムシも、この分では100匹くらいはいるだろうとのこと。これもこの辺りの草地の手入れがうまくいったからでしょう。松虫は、ススキや笹などイネ科植物、萩に多く棲んでいるそうです。しかし虫は松虫だけではなく、その他の生物たちとの兼ね合いも考えねばなりませんし、とにかく自然は一筋縄ではいきません。でもここは貴重な松虫の生息地として何時までも残しておきたいというのが会の方針なのです。葛の茂みには居ないようなので、これはもう少し刈った方がいいかな、などと言い合っています。
実は、集合場所から耳を傾けながらゆっくり歩き出したのですが、最初私の耳はうまく働きませんでした。「あ、〇〇が鳴いている!」と、もちろんKさんの耳や眼は特別ですが、そう言われても私の耳は、そうかしら、と思うばかり。そのうち、うるさいばかりのアオマツムシの、あの声が聞こえてきます。それらに混じって、ささやかな日本古来種の虫たちの声を聞きださねばならないのです。「あ、マツムシの声が聞こえた」という声、「でも、何だか弱々しいなあ・・」など言っている人がいます。「この辺で鳴いていますよ」。しかし最初はなかなか聞こえなかったのです。聞こえるのはアオマツムシだけ。またそのほかのを聞こうとしても、何だか自分の耳鳴りのようでもあり、そうではないような…。
人間の耳は機械と違って、周囲の音を全て収録しているのではないとよく言われます。だから難聴になったときに使う聴音器が、自分の耳に合わないといわれるのもそのせいでしょう。人は選択してものを聞いているようです。何かに集中している時は物を言いかけても聞こえないというふうに。聞き分けもやはり慣れがあり、訓練です。たぶん音楽の指揮者は、オーケストラの各パート全てを聞き分けているに違いありません。
耳を澄まして歩いていき、そして肝心の「老人の畑」に来て、草むらを歩きまわりながら聞いているうちにやっと、マツムシはあの声だと聞けるようになりました。一応マツムシはチンチロリンと鳴くといわれ美しい声とされています。これは文字により表記ですから、やはりそれぞれ人によって違いますから表記はし難いのですが、確かにそんな風にも聞こえ、実際はピッピリリ、といった少し高い声です。ここは草地ばかりで、アオマツムシがいなかったから私にも聞こえたのです。まだ多くの虫の声の中から識別するのは難しいでしょう。
とにかく松虫の声も聞け、その姿もしみじみと眺めることができ、大満足。星も夜が更けるにつれ、また眼が慣れるにつれ少しずつ星も見えるようになり、星に詳しい人の説明、また実際にUFOに遭い、写真も撮ったという(?)人の話なども聞きながら、正味一時間ほどの松虫を賞でる会はお開きになりました。
次回は、『源氏物語』にも、「鈴虫」という帖があり、虫の声を賞でる宴の情景が描かれています。そのことについて触れて見たいと思います。
投稿者 kinu : 2009年09月23日 14:02