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2011年06月27日
「こうもり傘の実験装置」
(一週間ほど留守にします。少し早いけれど、7月のブログとして、、)
科学者たちは「真理」という世界共通の基盤があって、科学雑誌に掲載されるべきかどうか、という判断は、様々な国の複数の研究者の査読によって決まる。投稿が主に英語で書かれる理由はそこにある。国も違い、会ったこともない人間から論文だけで判断される、ということが、何かとてもすっきりして、うらやましい気がして、「理系はいいよ、、、」と言ったことがあった。
すると、科学とは言っても、専門的になればなるほど、やっていることの意義が本人にしか理解できなくて、長い間、つまり判断基準が世界共通のものになるまで、それぞれの研究者は孤独な戦いを強いられる、と聞いた。世界的実験結果を発表した研究者をはるばる訪ねてみたら、その実験装置が、こうもり傘の骨組みを改造したお手製のもので、えっ、これで?と驚くようなことがあるそうだ。
自分がきっと何かある、と信じているのだから、きっと何かある、、、この単純な信念を貫いた人がいたからこそ、人類の歴史は変わってきた。そして今も、どこかで、パイオニアたちが社会の冷ややかな反応や予算不足を克服しつつ、がんばっている、、、そう考えると励まされる。
美術は個人の感性や技術、そして思想に大きく支えられるものではあるけれど、根本的には科学の分野に重なるところがあると思う。こうもり傘を改造して実験装置を作るように、描いていけたら、と思う。
2011年06月01日
「雨の唄」
雨の季節には「雨の唄」を聞こうと思う。「雨の唄」と言っても、人それぞれだろうが、私は多田武彦作曲の合唱曲「雨」に思い出を持つ。
中学に入った息子は音楽部に入り、初めての定期演奏会でこれを歌った。思春期に差しかかろうとしていた息子が、沢山のお兄さん達に混じって、一生懸命歌っている姿に、あ—もう安心だ、と思った。何が安心か、よく分からないままに、、、
この曲は多田武彦が複数の詩に作曲した無伴奏の男性合唱曲で、6曲で構成される。今は、ありがたいことに、 you tube で聞くことができる。
多田武彦 作曲 「雨」
第1曲 「雨の来る前」 作詞 伊藤 整
http://www.youtube.com/watch?v=txdl93UNkWI&feature=related
第2曲 「武蔵野の雨」 作詞 大木淳夫
http://www.youtube.com/watch?v=Xtfko_AoDys&feature=related
第3曲 「雨の日の遊動円木」 作詞 大木淳夫
http://www.youtube.com/watch?v=Bm-PKOdgATU&feature=related
第4曲(初演版) 「十一月にふる雨」 作詞 堀口大学
http://www.youtube.com/watch?v=mZnUa_FJZ3k&feature=related
第5曲 「雨の日に見る」 作詞 大木淳夫
http://www.youtube.com/watch?v=iHSop-OfkGw&feature=related
第6曲 「雨」 作詞 八木重吉
http://www.youtube.com/watch?v=DLWdz4VR-10&feature=related
第1曲の「ざーっとやってこいよ、夏の雨」というスカッとした導入も見事だし、第4曲「11月はうら悲し」という男性ならではの低音の響きや、第5曲「ざ・ぼんが、、、」という、香りが漂ってくるような音の連なりも魅力的だ。第3曲「遊動円木」とは、「丸太ブランコ」のようなものか、、、古風で、いい言葉だ。
息子は、今はもう私の手を離れた。私は第6曲「雨」が、しみじみと心に染みる年になって、この季節には時々聞いている。
息子よ、あの一筋の気持を覚えているか、、、息子よ、、、