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2005年09月17日

野良犬ピエール

            野良犬ピエール


      まるで厚いガラスの切り口みたいに青い
      まるで言葉をなくした心みたいに青い
      まるで空一面になびく花みたいに青い……
      

      …そんな青い夏の夜明けに
      まぬけな野良犬のピエールは
      声も立てずに死んでいった  
      風にそよぐ麦畑の片すみで


      空は 何にも言わずに 最後の星を消して
      風は白く 何にも言わずに 麦の穂をゆすり
      大地はめざめ 何にも言わずに けものたちをそっと抱く


      …そんな青い夏の夜明けに
      捨てられた野良犬のピエールは
      朝露にぬれたまま声も立てずに死んでいった
      すりきれた小さな首輪つけたまま

      
      ”そうしてその日空にゆれる向日葵の花の下で
      おまえは目をひらいたまま 
      初めてのみじかい夏と別れた”


(「一匹の犬よ。おまえがイヌでわたしがヒトだから おまえを殺したものを訴えることが
 できない。 おまえが輝く夏の夜明けにどのように無残に一つっきりの命を断ち切られ
 たかを。おまえの白い毛並みがどれほど農薬の吐しゃ物で汚れたかを。おまえのまだ
 幼い目がどんなに空しく明けそめた夏空の青さに向かってひらかれていたかを。
 おまえが犬でわたしがヒトだから、わたしはただ悲しむことしかできない。」……と前書き
 をつけて、この詞を発表してからどのくらいたったことだろう。でも忘れられない事件
 です。私と一匹の飼い犬(拾いイヌ)との間にほんとにあった今は悲しい思い出です。)


       

投稿者 ruri : 2005年09月17日 22:33

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コメント

青さが沁みる悲しい思い出ですね。実は私にも、そんな思い出がありました。小学校入学前の私とその小犬との写真が、赤ちゃんだった私の一番最初の写真の次に古い写真になっています。その小犬は、除草剤として撒かれた強力な農薬のために、いのちを落としてしまいました。動物好きの父は、その後も様々な動物を飼いました。黒い猫、片方の耳がたれている大きな犬、豚、鶏、鳩、兎、などです。愉快な思い出をひとつご紹介します。私がエサをあげようと戸を開けた瞬間に、囲いの外へ豚が逃げたのです。痩せているので凄いスピードです。表通りの道をどんどん走っていきます。困ってしまい大きな声で「だれかつかまえて」と叫んだら、町内の人々が出てきてみんなで追いかけて大騒ぎになりました。車も走っていないのどかな昔の田舎道ですから、豚は無事に保護されました。

投稿者 青リンゴ : 2005年09月18日 11:25

似たような思い出を持っておいでなのですね。あれはもしかしたら鼠退治の農薬だったかも。真夏の暑い8月13日の明け方で、しばらくはお盆になると辛かったです。

ところで豚さんの話、まざまざと、画になりますね!笑いました。豚さんには悪いのですが。

投稿者 ruri : 2005年09月18日 22:57

厚いガラスの切り口みたいに青い・・が鮮烈な悲しみを予告しますね。犬や猫、動物たちは言葉を持っていないのでいっそう悲しみをそそります。

最近は犬も猫も、鳥も飼っていないのでそういう体験は無くなりましたが、近所の犬で私の散歩友達だったアリス(拾われた雑種でしたが)がガンで大分前ですが死にました。

この家に来たての頃、隣の猫がよくやって来て、可愛がっていたのですが、ある日様子がおかしくなって、電話をかけてきてもらいましたが、臨終だったのでした。動物映画を見るとき私は絶対に一人で見ます。ちょっとした悲しい場面でも泣いてしまうので。

投稿者 木苺 : 2005年09月21日 18:58

生きもののことについては、いくつも哀しい記憶があって、ぺ

ル=(ピエール)という飼い犬、ぺぺという黒猫など(同名の

が何代もいて)、文鳥、九官鳥、金魚など数えれば切りがなく

て、近所のペットたちともそれなりに顔つなぎをしていました

っけ。結構仲良く!

最近は生きものたちの映画はラストが辛いのでもう見ないこと

にしています! 「いっそクジラとでも暮らしたいなあ…。」

投稿者 ruri : 2005年09月22日 14:47

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