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2005年09月20日

鯨売りの歌

                 鯨売りの歌


              クジラを探しに出かけたんだ
              岩ばかり続く荒れた海へ
              おれの船はもう役立たずで
              迷いクジラの一頭さえ見つからない
              海は汚れ 砂浜は靴跡と骨ばかりさ


              おれはやっと明けがた戻ってきた
              地獄の底から引き上げられたように
              おれの心はくたびれて
              なんだかもうあの空がからっぽに見える


              海は黙り 砂浜は靴跡と骨ばかりさ
              むかし仕留めたあの大クジラの声だけが
              あの世までおれの暗い海を騒がせるのだ


              せめておれは歌おう
              残されたクジラ売りの歌を
              おれは歌おう
              すばらしいあいつらのために
              消えてゆくあいつらへのはなむけの歌を


               ”クジラはいらないか
                とりたてのクジラはいらないか
                おいらの仕留めたこのクジラ
                うまいステーキ クジラのさしみ
                大きな骨で家が建つ
                小さな骨で傘を張る
                脂をしぼろう 火をつけよう
                石けんに 機械油に カーワックス
                ダイナマイトに ソーセージ
                肝油、靴べら、麻雀パイ
                ドッグフードから ボタンまで
                無駄ひとつないこのクジラ
                骨から すじから しっぽまで
                使い尽くそう このクジラ ”

              
              さあ、お立会い 
              まるごとのクジラ一頭買わないか
              お代はいらない 
              そのかわり 
              そこに立ってるあんたの魂と引きかえだ           
              それくらい 値打ちはあるよ このクジラ
              海とおんなじ 塩辛い
              血しぶき上げたクジラだよ
              悪魔のように赤い火燃やした クジラだよ
              声限り歌いつづけた クジラだよ
              夢全体と引きかえに
              おいらが仕留めたクジラだよ
                
              さあ、お立会い…お立会い  


 
(これは「滅びゆく動物たちへ」のコンサートで、遠藤トム也さんが朗唱した詩です。
 その朗誦が印象的で、今も耳に残っています。)
 

                     
                       

投稿者 ruri : 2005年09月20日 21:34

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コメント

ふと、小説の「白鯨」と「老人と海」を思い出しました。かつては、捕るものと捕られるものの間には、心が通っていたし、暗黙のルールやいのちをやりとりする感謝の気持ちがあったと思います。それが消えたとき、動物たちの滅んでゆく状況が一気に加速したような気がします。

投稿者 青リンゴ : 2005年09月20日 23:10

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