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2005年10月22日
詩ひとつ
風景 前田ちよ子
僕等はこれから生まれるのか
それとも死んだあとなのか
僕等のいるこの闇が
何なのかわからない
さくらのはなの散る下で
僕等は輪になって座り
うすいももいろをしているはなびらを
たぐり寄せては
細い針と細い糸で綴り
僕等の知らない
あるいは忘れてしまった母のための
厚い花輪を作り続ける
切れ切れに はるか遠く
僕等を呼ぶ声が聞こえたような気がして
手を止め 眼をこらし
耳を傾けたあと
一層緻密になる闇
ひざの上に積み上がって来る
はなびらの重い綴りを繰り
積み上がれば繰り
積み上がれば繰り…
僕等はこの繰り返す作業に埋没し
やがて さくらのはなびらの散る音も
あの声も…
僕等には聞こえなくなる
これは「ペッパーランド」の創刊同人だった前田ちよ子さんの作品。今は詩をかくことから離れているけれど、彼女の詩には、時空を超えた生への神話的想像力が感じられて、読むたびに心惹かれるものがあった。その詩に触れるたびに、しんとした気持ちにさせられた。
「前田さん、また作品を読ませて欲しいよ!」
この声がいつか彼女の耳に届くように!
投稿者 ruri : 2005年10月22日 20:12
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コメント
わたしも、いっしょに呼びかけたいです。
「前田さん、また作品を読ませて下さい。」と。
お作の「風景」に感動しました。作者の前田さんと紹介して下さった水野さんに感謝致します。このようにし〜んと澄み切った、すぐ背後に広がっているはずなのに、日常に埋没していては、なかなか見えてこない世界を展開されていることが眩しく、まだまだ未熟なわたしも、もっと探索したい意欲がたかまります。
投稿者 青リンゴ : 2005年10月22日 23:21