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2006年07月30日

アパップのモーツアルト

先日紀尾井ホールにモーツアルトの曲を聴きにいく。クラリネット協奏曲とヴァイオリン協奏曲三番がメインのコンサートだった。クラリネットの演奏では、特に第二楽章のピアニッシモの音色の繊細な美しさに引き込まれうっとりしてしまった。
ヴァイオリン演奏はジル・アパップ(Gilles Apap)。1963年アルジェリア生まれのフランス人。今はカリフォルニア在住とのこと。即興の妙技と演出満載の演奏で人を驚かせるといわれるが、ほんとうにダイナミックな舞台演出には驚く。特に第三楽章のカデンツァは型破りで、口笛とうたで入り…つづいてコサックのダンス曲みたいなたのしげなメロディーやリズムが飛び出し、次々と変化しながら、延々10分以上もとどまるところを知らない。初めは唖然、次に俄然たのしくなり客席はみな固唾を呑んで聴き入るばかり。演奏スタイルも変わっていて、楽団の背後はもちろん、その間を通り抜け、一人ずつに目配せ?しているような感じ。

もちろん演奏はすばらしく、その華やかなきらめきのある響きは心を吸い寄せる。バイオリン協奏曲三番は私の一番好きな曲だが、このような音色で聴いたのははじめてかもしれない。きっと彼は音楽の精を自分のなかに住まわせているのだ。音楽のせまいジャンルの枠をこえ、さまざまな民族や風土を横断して風のように行き来できる自在な音楽への精神を育てているひとなのだ。モーツアルトもこれをどこかで聴いて大喜びしているだろうなあ…などと思った。

投稿者 ruri : 2006年07月30日 13:34

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コメント

ジルさんの生き生きしたヴァイオリンのパフオーマンス演奏、見て見たかったでね。

聴衆の声なき声(驚きの歓声)が集まると見えない力になって演奏を変えて行きますから、既成の曲が新しく息を吹き返し、今生まれた曲のように聞こえて来たことでしょう。いいですね。

面白い演出をなさるジルさんってパンフに載っていたあの人かなと顔を思い浮かべて見ましたが、好みではなかったので捨ててしまっていて残念。

最近は空気の読める指揮者、踊る指揮者、勘所で声を出す指揮者もいてその人間味に人気があるようですね。

ひところは同じ演目を来る日も来る日も繰り返すだけの死臭漂う操り人形的なクラシック界と言われていましたが、曲の本命が直に感情を伴ってゆるぎなく聴こえてくるピアノのフジ子・へミングとかも現れ、型破りのよさを分かる人が多くなりましたよね。

そのように内部から変革が起きてくると、作曲した方も、100年ぶりに曲が生き返れてエルギーが補給されるので驚きつつ喜ぶでしょう。

充実、開花、結実がくりかえされますね。

投稿者 獅子童丸 : 2006年07月31日 00:42

演奏する方のご感想、なるほどと思いつつ読みました。違うジャンルの表現にも通じることで、よい刺激をうけました、あの演奏には。

投稿者 ruri : 2006年07月31日 16:32

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