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2009年06月29日
「月の魚」と英訳
先日紹介させていただいたEdwin A Cranston著「The Secret Island and The Enticing Flame」から、幾篇かの自作品と、Cranstonさんによる訳を載せていきたいと思います。
月の魚 水野るり子
魚よ
おまえは涙をながしているね
アンダルシアの原野をゆく
一頭のロバの背中に
下弦の月がかかるとき…
永遠のある一日からひきあげられ
遠く運ばれていく魚よ
おまえは乾いていく大地への
一滴の供物なのか
Moon Fish (translated by) Edwin A Cranston
o fish,oh
you shedding tears over
Andalucia carried
donkey-back up wild fields
a waning moon
drawn bowstring down
up from one day in eternity
far,far o fish,carried away:
you are like one drop of offering
for the drying earth
魚よ
おまえの魂はどこへいくの
透き通った空の大きな壷のなかで
月がだんだん欠けてゆき
おまえが運ばれる土の器から
海はひとしずくずつ蒸発していく
すると 魚よ
おまえの小さなからだは
月のさみしいかたちに似て
弓なりに空へはねる
o fish, oh
your soul-globe’s going
in the great transparent
bowl of sky the moon
breaks piece by piece
and the sea dries away
drop by drop from the earthenware vessel
where you’re carried, o
fish,oh
your little body
copying the lonely shape of the moon,
leaps bowlike toward the sky.
魚よ
何万光年かなたの星にまで
その水音はとどくだろう
おまえはそのころ
憶い出のように
月のない空にかかって
うしなわれたこの水の星を
見下ろしているね
that sound of water
stars will listen to
ten thound years from now:
Then you are
hanging in a moonless sky
like a memory
looking down on a lost
waterless planet.
これは1990年頃の作品です。詩集には入れていません。英訳されてから1,2箇所の小さな訂正をしました。
?
投稿者 ruri : 2009年06月29日 14:05
コメント
「月の魚」は、初めて出合う作品であり、英訳も添えられているので、とても新鮮でした。魂のゆくえを追い求めて、悠久の流れへと視界がひらかれてゆくことで、かたちあるものの儚さは、一筋の光へと導かれたと思いました。英訳につきましては、(憶い出)が(memory)だけでは、微妙な意味合いが伝わらないような気がしましたが、(魚よ)の(o fish,oh)には、英語ならではの輝きを感じました。
投稿者 青リンゴ : 2009年06月29日 22:39