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2012年12月31日
岡野絵里子『陽の仕事』
しばらくご無沙汰しているうちに、もう大晦日になりました。
今年のさいごなので、好きだった詩集『陽の仕事』のなかからの一篇を載せたいと思います。
光について
岡野絵里子
眠りの中で人は傾く
昼の光を静かにこぼすため
鮮やかな光景を地に返すために
その日 私は沢山の光を抱いた
駐車場に並んだ無数の窓 その
一枚ずつに溜まった陽の蜜
無人の座席に張られた蜘蛛の糸を
渡って行ったきらめくビーズ
それから
聖堂の扉から 歩み出てきた花婿と花嫁
籠一杯の花びらを
私たちは投げ上げた
喜びと苦しみの果ての声のように
薔薇のように束ねられて
高価な写真におさまる人々
私たちはどこから来たのか
囁く過去の影の中から
夜毎の孤独な夢の中から
それでも
朝の最初の光と共に 人は
あふれるように歩いて行く
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新しい年を迎える前の夜に、あらためてこの詩を読み返す。ひとりひとり、どんな夢の
中を通り抜けていようとも、朝の光がさして来るたびに、あふれるように共に歩き出して
いけるといい…と思う。