2009年08月30日
唄
唄 パチンコ屋の換金所の前で、もう何時間も一人遊びをしている子供がいた。 台車にぶら下がったり、独り言を喋ったり・・・。 どうやらこの子の両親は、パチンコに夢中になっているらしい。 「おばちゃん、コレ開けて。」 ガチャガチャの機械から取り出したプラスチックの丸いボールの蓋を開けてと言う。 「ありがとう。」 女の子は無邪気な笑顔で、再び換金所の前に座る。 夕陽は傾きかけていた。 ‘‘この子の親はどうしているのだろう・・・。‘‘ そう考えていた時、それを見ていた私の母が、ふと 「あの子は強い子になるだろう・・・。孤独ということからは強い子になる。」 と、呟いた。 その時、女の子の母親らしき人が 「もう、中で遊びなさいって言ったじゃない!!」 と、女の子の手を引っ張った。 その子は母親の大きなお腹をさすっては 「赤ちゃん、赤ちゃん。」 と、はしゃいだ。 どうやら母親は妊婦らしい。 そして換金所で働く母の話では、毎月二回、土曜日曜は、女の子は換金所の前で遊ぶ。 「孤独に強い子になる」 私の母の一言が、頭の中でリフレインする。 果たしてそうだろうか? 今度は赤ちゃんが産まれるというのに。 赤ちゃんが産まれたら、母親は姉になるその子の面倒まで見れるだろうか。 幼い頃の愛情不足が、大きくなって暴走しなければいいのだけれど。 その子も淋しい。 私も何だかやるせない。 また、パチンコでしか満たされないその子の親すらも・・・。 いつからこの国は、こんな孤独な社会になったのだろう。 夕陽はもう、すでに沈んでしまったというのに。 それでも少女は、自分にしかわからない唄を歌っている。 -------------------------------------------------------------------------------- 散文(批評随筆小説等) 唄 Copyright 為平 澪 2009-07-25 05:28:53縦投稿者 つるぎ れい : 2009年08月30日 12:30
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