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2011年02月27日
青空から涙
青空から涙
青空を折りたたむような
終い事に追われ
広げた風呂敷も
今となってはたためない
こびり付いた友情を
優柔不断と殴り書き
サヨナラと
一言書いた紙飛行機
青空に向かって
飛ばしてみたら
たちまちの曇り空から
大粒の涙が降ってきた
私が慌てて折り畳んだのは
あなたからの
最後のラブレター
だったのかもしれない
2011年02月26日
未完成の・・・
未完成の・・・
私は身体に
金色の蛇を飼っています
嫉妬の流動体が
這いずり回る
未練と栄光だけが
支配する半身
私は
紫の鱗の分だけ
秘密を持ちます
爪先形の秘密たち
肌を締め付け
こびり付き
過去の恋を
絞りだそうとする
屈折し挫折した
絵文字のような
サヨナラの冷血さ
私は表情を隠したまま
唇を閉ざし
誰にも知られぬよう
あなたを
アドレナリンから
追い出そうと足掻きながらも
滲み出る終わった恋に
まだ
涙がでます
私は上手に苦悩する
だから
この想いよ
最期まで
未完成であれ
未完成であれ
リリー
リリー
お互いに惹かれ合う
レース糸でも
こんなにも
まばらなモノたちだらけで
一つになろうとしている
ねぇ
リリー
どうか教えてよ
こんなにも
違えた道を選びながら
あなたは
誰と細くても永い糸を繋げて
多彩な作品を
完成するのだろう
ねぇ
リリー
レース糸もリリーって呼ぶ国があるんだよ
そして
俯く白百合も
リリーと呼ばれる
だから
気付いてしまったんだね
僕たちは
同じ顔で編まれた
同系色を覗き込んでは
きっと
自分だけを
愛していた
奥底に秘めた
絡み合う解れに
目を背けて
君を
愛していた
君だけが
僕の完成品
君しか
愛せなかった
リリー
白百合よりも
たおやかで
繊細な糸のひとよ
月華の祈り
月華の祈り
まだ
薄紅の蕾のまま
あなたの指先の呪文に濡らされて
開いてみたい
女の子から
女という華に
狂い咲く闇夜の怖さ
しんしんと
冴え渡る
月夜に冷気
絡み合う四肢
幾度も 幾度も
甘い血と蜜を請う
あなたへの微熱に
苛まれた私
身体
柔らかな曲線を
くねらせては
その長い指で
肌 薄紅に染め上げられ
動きに合わせて
私 鳴く
どうか
この濡れそぼる華を
卑しいと
そのまま
捨て去らないで
いてください
あなたとなら
一輪挿しの
薔薇色の夢
永久に
朽ちるまで
2011年02月08日
生
生
人は泣いて生まれてきたのです
この世の光
未来と夢の翼を
信じて
人は泣いて生まれてきたのです
老いてゆく
置き去りにされる
孤独
夢の翼を休めるな
光射す文字を描け
けれど
忘却の能力は
電子辞書から
文字を暗闇に茫滅
生とは
如何に
自由で拘束された人生を
涙で彩る
産声をあげた
その日から
2011年02月07日
少年
少年
新聞紙とは
正反対の方向に
飛び出したがる
明日の犯罪者
遠い国で
死んでゆく
豊かな心の子供たち
日本で壊された
濡れて腐った伝達神経
解体された合体ロボット
弱肉強食のナイフを
握らされたまま
踊らされて
未来を
灰色の空と濁った海の狭間に
祈りを詰めて
流した小瓶
異国には
届かないまま笑われて
地上が微かに揺らいだら
いつかの
少年は
明後日の
護衛車の中で
ゆらり
ゆらり
恋人の種
恋人の種
空に手が届くくらいに
馬鹿みたいに幸せ
海の底で人形姫に
プロポーズされるくらい
馬鹿みたいに幸せ
君が産み落とす恋人の種
私が産み落とす恋人の卵
目眩がする長いキスをしたあと
那由多の邂逅の向こう側
小さな庭に
淡い光を注いで
君の種を産めますから
僅かな輝きの果て
豊かな信実を育てみてもいいですか
爪紅
爪紅
思い出を欺いた朱印は
冷たい指先を恋しがって
月明かりの夜に
主のいない部屋で
紅の泪を
足先に残したまま
愛しさ事
剥がれてゆく
赤い部屋
赤い部屋
微睡むことさえ赦されない
赤い電灯の下で
君の舌を引きづりだし
僕は口腔から僕を入れる
開かれた四肢は朱に染まり
君の中の僕が脈打つ
キャミソールドレスから
爪先から
唇から
肌から
はだけられ
晒された全てから
鼓動が脈打ち
君はピアノの鍵盤の響きに合わせて
流動体の赤血球を泳ぐ
蛇の館に一人
囲まれたカナリアは
泣き顔は見せず歌うだけ
湿ったのは這わせた指先ではなく
遠い雨の日の赤紫のアイリスの芯
誘ったのは君
暴きだしたのは僕
二人が赦していたのは
欺瞞と虚飾の愛の調べ
だから火を点けないで
薄闇の天井に
ポツリ酸素を請う
赤い電球の色彩のままで
独りぼっちの
暮れない夜の
過ちの朱印
文字のない部屋
空っぽの鳥籠
安らかな黒い柩
赤い孤独が滲む部屋