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2011年05月29日
サイレン
サイレン
どこかで
サイレンの音が聞こえてきます
もう春です
日向ぼっこの子犬は
欠伸をしているのに
どこかで
サイレン音が聞こえてきます
今日は快晴
白梅が開花して
いい匂いが漂ってきます
だけど
どこかで
サイレン音が聞こえてきます
どこだろう
サイレン音
探しても探しても
見つからない
私は絵にかかれたような
真昼が嫌になって
側にあった
ペインティグナイフで
午後の憂鬱を
斜めに切り裂いた
それでも
サイレンが鳴り止まない
あぁ
そうなのか
そうだったのか
思い出しました
私は知らないうちに
孤島に独り
生き残った
最後の人間
だったのですね
2011年05月26日
壊れたベンチ
あなたの笑顔で
赤ワインと白ワインをあけた
公園の片隅ベンチ
もう
あなたの笑い声
聞けなくなって
久しく
ここであなたを待っていたのは
私だけじゃなくて
独り 涙に
押しつぶされた
壊れたベンチ
俯く顔をあげて
空を見上げると
あなたの声が降ってきて
雨が頬を伝う
もうあの椿は咲いてはいないのに
赤い思い出が詰まって
壊れたベンチ
みっともない私の
夢と優しさに騙されて
壊れたベンチ
2011年05月23日
告白
告白
今 貴方の声があれば
私は独りの夜に抱かれる
一度きりの
白いロングドレスを
赤い花で泣かしたのは誰
花束より
貴方が髪を撫でてくれる
てのひらの優しさを
髪飾りの思い出にしていたい
言葉より温もりを伝えてくれたら
離れられなくなる
私は【女】だから
2011年05月19日
蝕まれた夜
黒いガーターベルトで手を縛めて
薔薇の蕾で身体を奏でて
そして命令してください
(決して声は出すな)
と。
闇に浮かび上がる二つの脚を手折るように
こじ開けてねじ込んだ舌から
赤いスティグマ KISSは疵痕
死に神に抱かれた夜
快楽の目眩 意識は剥離 記憶の錯乱
忘却(レテ)河に沈み 溺れ続け
破れた鼓膜から オフィーリアの歌を聴く
貴方は海底に隠した私の柘榴をむしゃぶり続け
その底をなぞりあげる
私の声は地上の果ての貴方の本当の名を
呼び続けることでしょう
その声すらも私を嘲笑する右上がりの貴方の
口角にふさがれて
私は達しながら窒息死を
余儀なくされるがままの奴隷裸婦
悲鳴は忠誠の証
どうぞ 今宵
私を貴方だけの診断室へ
私を全て捧げます
どうぞ隈無く 膣(なか)を
お調べ下さい
光も射さない密室で
優しい拷問部屋の檻の中
十月十日
貴方に似た子を宿すまで
私を どうか赦さないで
赦さないで・・・・
夜はまだ
はじまったばかり・・・・
2011年05月18日
とおりゃんせ
とおりゃんせ
とおりゃんせ
とおりゃんせ
私の未知数
夢の数々
とおりゃんせ
横断
斜断
く/び
転げ落ちた
藪椿の花
落ちる音は
悲/願の赤文字
とおりゃんせ
とおりゃんせ
向こう岸へと
とおりゃんせ
彼/岸
彼の岸辺
賽の河原に
鬼が来て
戻れなくても
とおりゃんせ
2011年05月16日
泣く花
どんなに綺麗な言葉を並べても
それは私の言いたい事じゃない
どんなに綺麗に言葉を選んでも
暗闇が深くなるだけでした
どんなに綺麗な言葉を重ねても
花は必ず無常の風に舞い散るでしょう
あなたと語り合う言葉
笑顔と光に揺さぶられ
花はポンと咲く
けれど
落ちるその瞬間に
あなたのてのひらの中で
死ねたらいいな
(魂が振り向いて少し泣いた)
命或る限り
言葉を並べて選んで重ねて
紡いで逝く
命或る限り
あなたを慈しみ
生きて逝く
自然に零れた涙が
ひとつぶ
生死の狭間を
歌い続けていた
2011年05月14日
ただのひと
ただのひと
働いて働いて
稼いだお金は
ギャンブルに
喧嘩して喧嘩して
母は身重のまま
実家の病院で
弟を産んだ
望まれない子は
進学校の生徒会長に
期待して期待して
育てた会社と娘は
倒産した
単身赴任と入退院
歯車がかみ合わないまま
二人三脚の人生を
終わらす父へ
詫び状を
書き足す頃に
癌の宣告
喀血死
サヨナラだけの
ただの人
生んでくれただけの
ただの人
私がこの世で
たった一人
【お父さん】と
呼べる
ただの人
2011年05月11日
春嵐
幾つもの夜を抱いて
胸に描くは夜の月
春雨 憂い
夜の静寂に降る銀糸
闇に浮かぶ裸の輪郭は
剥離する眼にこびりついた
春の灯
三日月に横たわるあなたを
水が蹂躙する
紫淡の指先 曲線をなぞり
月光の如き肌は
歪な旋律に耐えられず
狂乱の蜜は滴る
真綿で首をしめるように
愛された躰に
牡丹の花弁は舞い落ちる
掌中で喘ぐ小鳥の
あいくるしさよ
恍惚と痛みを柩に納めよ
春乱
淫を誘い 白濁する視界
独り歩きする身勝手な独占欲は
あなたの骸を沈丁花と共に沈める
乾いた魂 青ざめた唇を
黒い爪でこじ開けて
口腔から溢れる紅の接吻
あなたの名を掠れた声で叫んでも
届かない恋
春嵐に
狂った二つ銘
紅の慟哭
月の沈黙
2011年05月10日
ひだまり
ひだまり
夢見心地ですか
夜だというのに
まだ遊び足りない
と駄々をごねる
あなたは少年
私の胸に
あなたが漕いだ
ブランコが
ひっそり
揺れています
一緒に
靴飛ばしした
公園
あの日の靴は
木陰に
隠されたまま
秘密の基地に
置き忘れた
あなたの知らない
ひだまりの
思い出話
2011年05月08日
手紙
手紙
誰かに手紙を書いてみたい
水面を漂うせせらぎと
若葉が色づくような思いのたけを
彩るように綴ってみたい
誰かに手紙を書いてみたい
それは天の川の物語
それはロミオとジュリエット
それはローマの休日
それは
眠りに埋もれない春の夜の夢
誰かに手紙を書いてみたい
未来の自分に届けたい
過去の自分に投函したい
一生懸命生きてきたか
尋ねられたり
尋ねてみたり
誰かに手紙を書いてみたい
青いインクを滲ませて
泣きながら
足掻きながら
私はここよと
どこまでも
どこまでも
あなたへ
2011年05月05日
ましろき月を紅に
ましろき月を紅に
切り取られた枠の中
微笑する貴女よ
夜々に言葉を降らせ
あらゆる星々を従え
寂寥の渦から
零れるは月の雫
笑顔の下に隠されし魂の旋律を
赤い媚薬に変えてくちづける
柔和なましろき肌に
刺青を施すように僕は愛す
刻印を受け貴女はのけぞる
火照る傷口
指先 爪弾く肢体
貴女の狂態
魂の戒め
刻印に成婚の証を
あらゆるスティグマを
貴女の痕に残し
解読出来ぬ夜を抱いて
今宵 鏡台に浮かぶは
紅に染まりしましろき月
2011年05月02日
時経てば・・・・
時たてば過ぎゆく人の無情さよ知りつつ恋を望むは愚か
人恋しい恋し人らを捨ておきて我はゆくなり自分の道を
指先で孤独をなぞり泣き明かす私は女哀れなくらい
さようなら疑似恋愛のおつもりで遊ぶのならば我に暇なし
時たてば春は来ると言うけれど凍える閨に春 便りなし
過ぎゆきて振り向くことも無い人とわかっていながら信じた嘘たち
2011年05月01日
すべてが砂に埋もれても
すべてが砂に埋もれても
満ち欠けする
嘘月に
惑わされるように
濡れた秘め事は
夏の日の線香花火
あなたの後ろを
追いかけてきた
私の足跡が
深海に眠る貝に
なりはてても
一方通行の恋の標識
私の墓標を
覚えていてください
全てが砂に埋もれても
記憶が灰になる日まで
倦怠と微熱
春雨の憂いにも似た倦怠が 濡らして止まず 強請るくちづけ
行間の隙間を指でなぞりつつ あなた探しに 開いた詩集
花曇り 繭に覆われ うずくまる 私は小さな地球の小部屋
車道すら 見捨てられた 線定規 棒線グラフに 収まらない道
鏡台に映った夜が続く昼 紅いルージュは寂れた小箱へ
日は暮れて タイムオーバー ゲームオーバー 私はひたすら歩いたメロス
大声で叫んだ恋を 拾っても 粉々に潰す さよならの君
誰のために 詩をよむ意味に 迫られて 息苦しさにあがいた私
惨めさと薄っぺらさと 儚さと 足して二で割る剥離する脳
書きかけの文字がゆらゆら 立ち上り 青空からは私の溜め息