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2011年11月29日
執着
夜が孤独を運び
激情が暗闇を
照らし出す
あなたの匂いの
立ち込める一切の
物たちが騒ぎだすと
血は蝋燭の炎のように
朱く蒼く燃え盛る
焼けない写真
褪せない傷痕
降り積もる優しさ
それらが真綿で
首を絞めるから
息ぐるしくて
胸をかきむしる
体に流れる水脈が
目から蒸発を始め
口から濾過された
水道水が零れ落ちてゆく
蝕まれて逝く躰に
ガソリンをまいて
渦巻き手を繋ぐ炎に
身を任せ
今 朽ちたはずの躰は
火柱となって
振り払えない
火の粉を生み出す
(困らせたい)
(奪い去りたい)
(閉じ込めたい)
燃え尽きることを
知らない炎は
成仏できない
狂女の亡霊にも似て
私と同じ顔をしている
2011年11月21日
孤独
宇宙が完全に時を止めたなら
人は空に憧れたりはしない
毎日が晴天ならば
一日で固形化した
油絵の具のような空に
群青色を塗りたくって
「よる」を作ってみたり
そこに青白い円をおいて
「つき」と呼んでみたり
そんな夢もみないだろう
重ね塗りするごとに
深まってゆく
キャンバスの果てしなさは
完成することのない
肥大する宇宙
誰かが言っていたっけ
人は少し孤独なほうが
宇宙に近づけるって
私は
宇宙というキャンバスに
神様がポツリと呟いて
落としていった
小さな赤い太陽
孤独は宇宙に
赤く咲く炎
私を燃やし続けて
尚 熱く
輝く
2011年11月16日
轍
轍
残されたあと
君を想う
安いドイツワイン
白と赤の交わる夜
残されたあと
君を慕う
赤いテディキュアが
張り付いたまま
剥がれておちない
指のマニュキアは
もう塗り直せない
海に投げ捨ててきた
白い観覧車は
潮風に錆び付いたまま
動かなくなった
君の瞳から
一粒の海
ハーバーランドで買った
思い出のリング
別離の記念にと
泣き出しそうな
碧い君
残された痕
お互いに貪り
オブラートの愛憎劇から
放り投げられた
ペアリング
最後のさよなら
叶わない夢
記憶に沈む
君との轍
2011年11月12日
積乱雲
積乱雲
どこかに積もった溜息が
舞い上がって塵も積もれば山となる
君の頭に積乱雲
のんびりと羽をのばしているけれど
今か今かと
稲妻を腹に鱈腹蓄えながら
ふわりふわりと
薄笑い
2011年11月11日
チロルチョコ
2011年11月10日
紅い紐
紅い紐
「お前が必要なんだ。」
「でも、俺は妻を愛しているし、故郷を離れたくはない。」
「会社に縛られて、シャツがシワシワになって、
ネクタイが曲がってても、笑って営業に…」
そこまで言って彼は急に
携帯の声を押し殺した
一人寝の女の部屋で
夜が震えた
私は彼を縛る総てのものから
解放して
色を着けてあげたかった
(お前が必要なんだ)
守れない告白
色褪せないうちに
私は薬指に
ガーネットの指輪をつけて
空中で手首を
ひらり ひらり
と揺らす
まるで心中する事を
手招きするように
月
月
月
(乱太郎)
淋しげに唄う
恋などとっくに忘れて
靡く淡い音色
月の後ろ髪が解かれるとき
湖面の中央辺りに
漂う
在りし日の君の輪郭
月
(月夜見)
在りし日の恋ひとつ
水面に写るは
偽物の月の形
拾えど
掬えど
盗めない月
私の手は濡れていました
あの人との歳月を
泣くように
木枯らしに泣く
木枯らしに泣く
風に絡まる
褪せた新聞紙
転がるメイプルの葉
靴底から命の寝息
底知れぬ湖の
深い蒼
木枯らしに泣く
紅葉を宿した瞳から
七色の哀しみ
一粒