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2012年02月26日
革命
革命
嘆きと苦しみの手紙を柩に入れて記憶の河に流す
忘却の彼方で
永久に歌い続ける小鳥は
空の孤独に愛されながら流星となる
愛は残酷な仕打ち
孤独こそ永遠の味方
誰にも奪われず
美しく妖しく咲く薔薇の棘
理解されない棘
それこそがもうひとりの私を護る武器
手紙が褪せて燃やされてゆくように
小鳥が囀りながら消えて逝くように
誰にもかかわらず
誰からも抹殺されてゆく
私の存在価値
大地から
世界に向かって燃え上がる
哀しみの茨の弓矢を解き放つ
時をすり抜け
最期の女王の胸を射抜いた痛みが
ショパンのピアノの旋律と共に
激しく鼓動を打ち鳴らし群集は踊り出す
アントワネットのように
ギロチン台で
愛し合いましょう
絶望と新生の淵の間から
甘く笑っては
舌を出すために
孤独が恐怖より
退屈な一生だったと
言わんばかりに
蛍光灯
明るさ四百ワット
お喋り好きな私
でもね
真後ろに
できる長い陰は
明るすぎて
見えないの
明るい私
笑顔の私
そこには
しわくちゃな
泣き顔や皺も
ひかりに消されて
つるんと剥けては
私ごと
蒸発してゆく
捨てたはずなのに・・・
ひとことに昔の恋が騒ぎ出すまだ好きなんだまだ好きなんだ
ねむらないよるを偲ばせたあなたのよこに知り合いの彼
適当にあしらう筈があしらわれ宙ぶらりんに逆さに吊られ
水槽に捨てたはずの沈殿物が透明に輝く彼女と彼氏
思い出が美化されてゆく二十五時夜について語らう二人
2012年02月17日
櫻狂(ハナクルヒ}
櫻(ハナ)に喚ばれたんだ、と少年(アナタ)は云った
(一)
春は宵櫻(バナ)
漆黒の薄衣纏し少年は
夜々に微熱を身に帯びて
春の目覚めを恐れては
右手に短刀 黒袈裟羽織り
まほろばの櫻(ハナ)に春を見る
櫻(ハナ)よ 華よ 心あらば
我が身の卑しき早春の
性(サガ)の時を御身に封じ給え
されど我が身も男子(オノコ)故
今 一度(ひとたび)の憐憫を
(二)
否 我は老い櫻(バナ)
もはや華の季節(とき)は過ぎました
妖しき言の葉薄紅の紅に宿して花弁舞う
春を忘却に沈めた櫻に何のご用意がございましょう
吹く風に抗えば命を冥府に墜ちるでしょう
黄泉路 開かぬうちにお帰りを
人が櫻(ハナ)に狂うなど
ましてや櫻(ハナ)が人に恋うなどと
(三)
春は夜
宵に酔い
月が奏でる魂の旋律
共鳴する二つの影は赤裸々に
深みに墜ちては昇りつめて濡れそぼる
幽妙な舟底は雫に溢れ
注がれる熱に鼓動は嘶き
時空(トキ)を超えて滑り出す
狂い櫻(バナ)と雄の四魂
絡み合い墜ちては突き上げ
奪い奪われ紅櫻
死と再生を繰り返し
櫻(ハナ)は満月
月に咲く
(四)
女の潮は男子(オノコ)の精を巧みに操り
尚 朱く 紅く天に向かう
男子は聖域を犯したその手で
小刀 ひとつ
自らの心の臓を櫻(ハナ)に捧げて 来世の春を誓う
【櫻狂(ハナグルヒ)
恋し女(ひと)は華と為り
来世の縁(えにし)を此処に結ばん】
黄泉平坂
禍事の
良しも悪しも
人知れずして
恋と呼ぼうか妖しと云うか
只、 櫻(ハナ)に喚ばれたんだと、少年(アナタ)は云った・・・