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2013年03月11日
携帯を濡らす
携帯を濡らす
あなたの為に携帯を濡らす
秋の力ない弱い日差しから
聞こえるあなたの
柔らかで 穏やかな声が
枝枝の葉を 全て色づけて
あとは 風に散りゆく運命を述べたから
あなたのいなかったモノクロの世界から
この世界の美しさを 文字で彩って
私に言葉に直して 声に出してくれた人よ
あなたが 時の風に連れ去られても
同じ木に寄り添った
葉たちのことを思い出して欲しい
まだ
残響するあなたの
穏やかな哀しい非命に
携帯の画面を濡らすことを
赦して欲しい
この携帯が あなたの墓標
もう だれにも
あなたを見せたくはない
わたしは 涙に濡れた
ディスプレイを閉じて
平らな器に 水を貼り
静かに 携帯の
息をとめるように
あなたを 沈める
抒情文芸 146号 春
清水哲男 選
入選作品
投稿者 つるぎ れい : 2013年03月11日 22:48
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