2015年05月31日
盲目
目の開いたバラバラ死体を私はずっと捜していた
手はお喋りだと口がくちぐちに言うので
うるさい手を切り落として 口に食わせた
口は満足そうに 黙ってくれた
足は突っ立って進むことしか能がないと
耳が教えるので
足を売って耳栓を買った
耳は都合のいいことしか 言わなくなった
足を失って 胴が重いことがわかった
私は軽くなりたくて 腸を犬に与えた
犬は鼻が利いたので私が捜している
死体の所まで 私を乗せて運んでくれた
大きな鍾乳洞の壁には巨大な目や耳や唇が
私を監視し 私の臭いを嗅ぎ付け 私の噂話をした
目前には見開いた目の
私に似た首が祀られている
下には私が今まで棄ててきた手や足や内臓が
小さく干からびてさらしものになっていた
壁から臭いと鼻が笑い出し 口たちに唾を吐かれている
もう誰も手を繋いでくれないのだとわかった
一緒に歩いてくれる人はいないと知った
そして私にはなかの良いお腹はなかった
だから限界まで旅をしてきました
(お父さん、お母さん、あなたたちが言い残したこと全てを見つけるために
瞳孔を開いたままの顔の
右目と左目が 私の姿を認めると
涙と共に
私は目蓋に 押し潰された
※
今年も祠から 赤子のはしゃぎ声や泣き声が響いてきます
油蝉たちが五月蝿い、のか
目を閉じなければ
聞こえることは
決してない
※2015年6月1日。
四十九日の父のために。
投稿者 tukiyomi : 2015年05月31日 22:26
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