2015年09月24日
夏の葬列
西日に揺れる色褪せたカーテンの隙間から
焔に焼かれた夏の葬列を見送る
背を丸めて折れ下がるだけの向日葵は
昼に立ち止まり、夜に顔を奪われたまま
晩夏を歩む
背骨を晒し腕も手も顔も腐らせ
「老い」は立ち止まることができない
※
夏との闘いを 乾いた涼風が脳裏から消し去ってゆく
遠い波にさらわれた悲鳴、あれは誰の灯だったのか
顔を焼かれた者の墓標
喪失した名は誰が優しく呼べただろう
ただ、横たわることしか後がない無印の花について。
※
お前の父は蝉の抜け殻ばかり集める一生だったと、
大輪の面影を窺うように
母がうつむいた夏の死骸を並べている
※
青空は紅蓮に燃え盛り 向日葵の影だけが空へ向かう
その影を追いかけながら走る赤い目の夕焼け少女に
父が与えた花は もう、燃えてしまった、のに
思い出だけが口走る
(ひまわりって、どうしてかれちゃうの?)
(日の光のことばかり語って、もう泣けなくなったから)
私の眼の中で向日葵が咲いて燃やされてゆく
※
焼けただれた空の隙間を仏間からこぼれ出る線香の煙が
淡い姿をくゆらせて立ちゆくように
私の立ち位置を揺るがす風が
足首のない父を連れ去って逝く
過ぎたはずの熱風が込み上げるたび
私の全身は濡れたまま
花の骨の在り処をねだる
投稿者 tukiyomi : 2015年09月24日 20:59
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