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2017年05月17日
不在
夕暮れ時の寒い裏通り
透き通るくらい引き伸ばされた薄軽い
ビニール袋の中には食材と
もう片手には人の身を覆い隠せるほどに巻かれた
トイレットペーパーを持ち
返事のないアパートに帰る
※
生活は
口から入れるものとその先から出るものを
拭うものがあれば
トイレで流せばやり過ごせる
毎日は、つまらない、それでいい
詰まってしまえば
見えないところまで見えてしまうだろうから
あとは目を瞑るだけ
眠ってしまえば気が付かなければならなかったことも
やりすごせるはず
※
それだけ簡単なことを
やり過ごせない暮らしの中で
トイレで毎日流していたものが
洗濯槽にこびり付いていたり
流し台から覗いていたり
※
眠ってしまえば
知らないふりをすれば
やり過ごせることが
できないとき 私は不在
※
朝、ぽつんと ひとり置手紙
滲んだ走り書き、一行のゆくえ
「私がわたしを生きられないなら私から出て行くだけ」
※
一行の、その先に運ばれて
わたしが私に手を振った
投稿者 tukiyomi : 2017年05月17日 21:35
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