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2018年04月01日
黒文字の家
猫が出入りできるくらいの隙間
かたづけられない机の上に書き留められた食材名と
予定の立たない献立
散らばりつづけるマジックの大きな黒文字の上に
母の頭がとけている
夜、着信音が鳴る日に私は戻ってきた
白かった子猫が薄汚れた雌猫になって
母の隣で母を守っていたようにまるく眠る夜に
私たち親子は平熱でいられなかったので拗れた
隙間風の酷い家でよく風邪を引いた
熱が長い間続いたが
投げ出された体温計なら
ずっと平熱36.4度を指していたのに
家には二人のことを推し量れる人はもういなかった
言葉が無用意な夜
机の上から散らばるもので
親子は美しく完成されていく
あとは。
乱雑に脱ぎ捨てられた部屋着
小さな綿入り布団が隣に一式
予定のつかない献立の上に並べられている希望のようなもの
その、筆跡の読み取れない文字の掠れていく黒さ
手で顔を隠し続ける、白かった猫
その あとは。
猫が出入りしたがるくらいの隙間
投稿者 tukiyomi : 2018年04月01日 21:07
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