2020年07月21日
胸が紅
上っ面の言葉を交わしすれ違う恋人家族その他大勢
本当がまるで無いのになぜ刺したナイチンゲールの胸はくれない
表面張力肥大する星一つ縛れる嘘が行ったり来たり
面倒な人付き合いを弾いたら面倒な自分と付き合うばかり
いつまでも逞しくいて健康で友人無くても君なら平気
2018年07月16日
父のことなど(短歌)
父の日に孝行するはずの父はなし仏間で独り呟けば闇
言葉なく言葉失い向き合えば 遺影の父は親より親に
アイフォンとアイスノンに挟まれた頭で語る父のことなど
横たわる娘を支えるこの家の 大黒柱の位置さえ見えず
お父ちゃんが死んだら困るやろ?成仏できない父の心配
2017年09月17日
短歌 五首
真夜中に時計の秒針胸を刺す丑三つ過ぎても消えないお化け
エアコンが冷房暖房間違える台風前の平熱微熱
忘れたい忘れたいと書くほどに思い出すため「寺山修司」
宛てのない手紙を書くより宛てのある手応えもあるコトバが欲しい
東京に空がないと泣く君の肩を抱く東京の人東京の雨
2016年09月17日
指
声でなく君の姿が欲しい日に空の十五夜指で突き刺す
ギター弾くピアノも奏でるその指が昨日を歌う夜の顔して
約束の指切りよりも正直な顔をしてると指差すあなた
その指が何本あるか数えてない暗い夜道を彷徨う身体
昨日だよ昨日だよって呼びかける明日の指切りできない二人
沈んだり浮上したり泳いだり地上と海をつなぐ中指
死ぬ時が来ても絡めた赤い糸蝶々結びくらいの束縛
夜の雲月を隠してどこまでも暴かないまま追いかけてきて
ひと声もあげず耐えて忍こと今生の恋すら戦国時代
対岸で君は返してくれという指が奪った記憶の手触り
2015年07月18日
It格差。
パソコンのシステム用語の七並べ これ読めますか これ読めますか
独りでも楽しみ方なら知ってます不正アプリの読書コーナー
ネットすら関係なしに生きてます母の身元は世界でシェア
あなたの保険証売ってますスマートフォンの検索エンジン
父が死に葬儀屋ギフト屋駆けつけて四十九日に表札屋がきて
ツィッターお馴染みさんがひとりごと 呟いたなら直ぐお気に入り
誰も喋らない山手線の昼間に乗り込むスマートフォン
マルウェアがシカクになって入り込む大枚叩いて滅んだパソコン
IDで管理される私たち 名前で呼んで名前を呼んで
ガラケーのメール送信出来ぬ母みて高校生が(笑)を送信
かくれんぼオフィス街の地下に鬼 路地裏にも目隠しがない
今日のあなたを同期する くるくるまわって同調意識
見つけたものを独り占めに出来ない共有はいつの間にかの今日の優越
パソコンのIを叩く指一つ デリートされる愛と愛
データが消えてしまえば泣く人と喜ぶ人の喋る写真
筒抜けです タダ漏れです ウィルスないのに裸の王様
2015年04月19日
餞
生きたいと願う父が死んだとき死にたいと思う私が産声あげる
サヨウナラサヨウナラって粉になるでんぷんみたいに翔ばされる骨
肉体の元素記号を燃やしても軽くならない質量 タマシイ
立ち上る狼煙のようなお線香まだここにいるまだここにある
この歌もこの歌も手向けるには早すぎた旅立つ父に春雨が降る
薄桜漆黒桜紅桜一斉に啼け一生に泣け
若き葉に季節奪われはなびらは紅の業を風に手渡す
学園門くぐり抜けて春は逝く桜並木は瞼の裏に
いろどりの傘に落ちる涙雨つられて連れられて思い出が通る
つなぐ手や背丈の高さのぬくもりは追いこせないの いつまでも父
2015年03月25日
名詞
手紙という名詞一つで嘘をつき君はすべてを赦されている
真実に名前があるとするならばいつかは弾けるウルトラソウル
なぜ愛は中心に置かれて赤くなるデーターベースの中が夕焼け
種という記号一つで結ばれた僕らは美しい本の虫たち
みみたぶをかむようにしてあじわいたい ことば ことば やわらかくして
腕時計放り投げた昼下がり靴音が鳴る じぶん じぶん
運ばれる私の名札や荷札たち整理できない片づけられない
2014年09月28日
夜を置く
デジタルの文字の数だけ姿見せラインのように近くて遠い
退屈な私たちに夜を置くスマートホンの便利な夜明け
東雲を鎌で研いだ三日月は昨日噛んだ爪の歪さ
山間を染め逝く夕陽の亡骸が蝉の骸の瞳に映えて
鈴虫に夜の始まり告げられて彼岸花の紅さを慕う
眠れない眠剤の罪の濡れ衣をカプセルにして飲み込む朝日
一人部屋独りの黒に馴染ませた瞼の奥にもうひとつの黒
くちびるが乾いたままでため息を吐き出さないで吸い込む遊び
眠れない夜をこじ開け眠らせる裂いた空から取り出す朝日
蟋蟀の一夜を浸す涼しさに壊されてゆく扇風機たち
残照の残り火みんな星になれその身一つの光を纏え
2014年08月19日
短歌日記
眠れない夜の隙間にとけてゆく名前を呼んでカムパネルラ
エアコンと冷蔵庫の音が響きあうここが私の夜の帝国
土曜日の夜は長いと靴が鳴る行交う夜のラブソングたち
憧れた花の都の片隅で小さな恋を育みたくて
夢を見るあの人の夢に夢を見る自分探しの入り口は私?
この恋にサヨナラなんていわせない見知らぬ顔して寄り添う二人
指先が湿っているの私たち見抜かないで私の太陽
愛、シテル、じゃない愛をする愛の意味すら知らないままで
死ぬまでに指折り数えることがある何回言えるの「好きだよ好きだよ」
生活や仕事で疲れる君のため背伸びしたキス言葉を添えて
2014年05月13日
産土の母
目を開け未来開けと狛犬が口から発する「あ」から「ん」まで
早朝の神楽太鼓が一を打ち旅立つ時ぞと背中を押せり
産土に護られ生きたらこの町の千年杉の大きさは母
2014年03月06日
2013年09月16日
香水物語
待つことのはじまりの香の名前には少女が似合うロリータ・レンピッカ
誘惑の呪文を纏う死の眠り夜の肌からヒクノテック・プアゾン
イブが摘む林檎の形硝子瓶アダムの喉に刺さった紫
赤い毒どんな夜をも眠らせる今宵も君が私を殺す
くちづけて抱いた夜から滑り出す恋を夢見て恋に憑かれて
この夜を越えたあなたは微笑んで振り向かないでサクレをふわり
待ちわびて待つことの意味の牢獄に囚われていた二人の蝶々
2013年08月15日
奴隷画家の恋
寂しさに 色をのせればセピア色 インク一つで終わらせた恋
黙ります 薬も飲みます だからまた 愛してください 絵じゃなく私を
なんで生まれてきたんだろう 獄中の裸婦 淋しい魂
誰一人出会わなければ深海で 眠れる盲しいた魚になれた
愛される 愛されないは 言葉遣い 金で雇った奴隷に轡
目も口も 耳も舌も塞ぎなさい 絵をかきなさい それが契約
誰も皆 花咲くように 嘘をつく 雨降るように 涙流れる
捨てられて ひび割れても まだ雨は 気が触れるまで 降れない予報
たくさんの たくさんの詩はいりません 手錠のような色インクたち
あの人に 私の言葉は通じない だから愛すら響かない日々
2013年06月19日
恋獄
駆け引きの
煉獄の恋に
繋がれて
交換したい
あなたの孤独
淋しさに
降り注ぐ雨
しなやかに
あなたを濡らす
わたしを濡らす
哀しみを
愛(かな)しみという
一文字に
変換出来ない
自分がキライ
独りという
夜に殺され
裁かれる
わたしは此処よ
わたしは個々よ
傷口を
舐め合うように
キスをする
舌から漏れた
さびしい さびしい
2013年03月11日
はぐれる
はぐれる
それをして楽しいですかという人に楽しいですよという寂しさ
暗闇に電球の灯りひとつだけ世界に響け携帯の指
悲しみを足しても割れぬ性格を瞳を閉じて飲む錠剤
悴んだ指先ひとつ燃える火を怒りと呼ぶな号泣と呼べ
朝が来るいつものように朝は来る起きてる夜に私は亡霊
静寂に包まれ身体はコチコチと骨を削る音(ね)時計コチコチ
うまくやれうまくやれよとよわたりをうらもおもてもあるいてわたれ
置き時計短針長針ずれてゆくそんなふうにはぐれ外され
僕の声叫んでみても憎しみが飛び出すだけの冬の空き部屋
抒情文芸 146号 春 小島ゆかり 選 佳作短歌
それをして楽しいですかというひとに楽しいですよという寂しさ
抒情文芸 146号 春小島ゆかり 選佳作短歌
2012年11月30日
世界の中心
世界の中心
悲しみを踝までに浸しては裸足で歩む触れたい背中
盲目の行方不明の両目たち夜を跨いであなたの夢へ
子守唄自分の為に歌っては涙を流すもうひとりの君
ただひとり私を信じてくれる人裏切りらないで夜明けの朝日
すぐそこに冬が来るから私たち肌のかたちが かまくらの熱
嘘つきと虚構と事実と小説と孤独と愛が詩人のスパイス
夜の闇静寂を滑り会いに行く私はいつかの御息所
箸が折れ携帯壊れヒステリーそんな私を畳んだ笑顔
いつの日もいついつまでも愛してるあなたはいつも世界の中心
2012年10月15日
ワガママ短歌
ひとひとり愛せないくらいのわがままで告白したいあなたが好きだと
昼下がり微熱を帯びた過去の汗あなたの風邪はもう癒えましたか
愛せない愛せない人を愛してる躊躇う私を殺して欲しい
声すらも優しさすらも体温も全てを奪う白い錠剤
震災が繰り返される夢をみて鯖の味噌缶だけの夕べ
2012年10月09日
生きる夢とあちら側
生きる夢とあちら側
同じ道違う道ゆく人が交差する句読点の分岐点
誰のため生まれてきたか知りたくて空に手を伸ばす昔の少年
地図にない街を自分で創っては嘆いて壊す生きる手応え
現実と汗と涙の狭間から出てくる夢は「自分を信じる」
容赦なく削らてゆく命の火ちっぽけな人が人を照らせる命の火
育つ愛誰の手のひらにいよいとも最期は黙って独りぼっちで
過ちは愛したほどに狂おしく君の胸には棘を遺して
どこまでも続く坂道を登りつめそこから何が見えていますか
もう耳も目も見えないし動けない私を見ているそれは神様
2012年09月27日
愛憎
愛憎
恋すれば恋するほどに憎らしく裏切り者の手首を切る朝
親だとかウザイばかりの関係を洗い流した血色の風呂
おとうさんもうすぐ死ぬ死ぬいうけれどあとどれくらいお金がいるの?
おかあさん体が動かないというけれど病院通いはいつでも達者
口ばかりたつ子は要らない家の為働けない子は施設送りに
真似事の詩なんて書いて家の恥さらす詩集に払う金なし
好きな人信じてみても届かない嘘ばかりつく触れない人
ついていこう何度も決めたの君の名をナイフで抉り安心した過去
愛すれば愛するほどに美しく殺めるように絡んだ身体
蛇の恋雌雄の区別がないほどに永い間揺すれ揺すられ
口づけた舌が解けた日の朝にサヨナラだけの言葉を遺す
蛇
蛇
蛇を呑むその毒素でまた蛇を殺し合いは果てなき蜜月
毒を知る毒の味だけ信じてるそんな乾いたガラガラの蛇
はむ術を成す術ばかり教えられ恋しあなたを絞め殺したい
大蛇なら呑み込まれたい私ごと溶かしてやりたいあなたの腸
雌雄さえ区別がないなら私こそ大蛇になってあなたを食らう
絡まった隙間もないほどピッタリと擦れあう音解けぬ痴情
極楽があると言うならば蓮は無く血の池からは紅の薔薇
毒食らう蛇に熟れた私なら喉は乾いて身体は濡れて
虚言でも身体ではなく魂が震えるような言葉の愛撫
罪人が贖いがてらに恋ひとつ呑み込んだのは言葉言葉
卑しめて辱めて串刺しにされた夜から血が止まらない
2012年09月15日
短歌 5首
悲しみを胸に秘めたわびづまい一人より二人涙より酒
安穏と皆に恵まれ文字を書く絶望が足りぬ孤独が足りぬ
高くより深くありたいという君の意味に刺された昨日の嵐
憎しみに曇る空に蓮の花開いた言葉は虚構に満ちて
陰影と策謀きたす秋の靄渦巻く中に人の顔顔
2012年08月06日
私の神様
生ぬるい手ぬるい愛ならいらないわ 目をくりぬいてあなたに忠誠
淋しさに淡き色を塗り重ね あなたの全てを汚してみたい
眠れないあなたの為に子守歌 辛くはないわと涙を流し
信じれば信じるほどに血を流す あなたが好きな私のはらわた
上の句で下の句を裏切るよう 教えてくれた私の神様
笑いあい愛していると囁けば 毒薬入りのワインで乾杯
いつの日かあなたの横で泣いたなら 其処で光るジャックナイフ
この恋が実ることがないように あなたを殺す私を殺す
2012年08月03日
熱帯夜
熱帯夜
身動きも取れぬ程に慕いしは伝える事すら叶わぬ恋人
汗ばんだ額にどうか接吻を髪をなでて指で溶かして
呼吸すら赦されなくば我が首に噛みつきたまえ戒めたまえ
我が身をば生かし滅ぼす君の愛熱にうなされ焦がれ焦がれて
甘き声幾度幾度も血の中で廻る罠と優しき目眩
2012年07月19日
贖罪が響いて
贖罪が響いて
髪を切り贖罪映す水鏡己に報いを神に刃(やいば)を
欲望の渦巻く中にあろうとも欺けぬ罪知る人ぞ君
2012年06月18日
ただ君に・・・。
ただ君に・・・。
秒針に胸を刺された夜の華眠れぬ夜に枕を濡らして
いじらしい棘ほど甘い顔はない花のように微笑む嘘つき
秒針の音聞け叩け我が胸の鳴りやまぬ夢の扉を開け
淋しさに唄があるとするならば薄情者が吹くよ口笛
俺の詩は普遍的だという君の普遍性ってなんのメタファー
隠してたでもバレバレの嘘をつく男の言い訳 女の秘密
新しい秘密と陰口増える度 人と人とが夜手を繋ぐ
眠れない夜を数えてモノロクローブー触れる針に揺すれ揺すられ
ただ君に優しくしたいだけなのにコインが裏切る本音の裏側
2012年04月25日
恋人へ
恋人へ
恋人と呼んだ響きが悲しくてアドレスを消す泣くな親指
春めいた今より過去がせつなくて胸には虚空 瞳になみだ
君の名を真夜中に探す淋しさにくるまりながら泣いてしまおう
好きだった二人ぼっちの春の日々独白ばかり空に帰す夜
2012年03月09日
追悼短歌 「敗者の美学」へ
追悼短歌 「敗者の美学」へ
雨音が涙に聞こえる二十五時自殺したKを思い出す夜
サイレンのように夜から木霊する詩人になりたい詩人になりたい
真夜中で夢を語る忙しさ彼を殺した言葉の世界
遺言は最果タヒみたいな詩人彼の遺した敗者の美学
大詩人大舞台で対談をそんな約束忘れてしまえ
僕はもう為平さんを超えたから笑って君は空の彼方へ
死んだ詩や死んだ詩人に用はないそう言う君は今は亡き人
僕の名はまだありますかアカウント彼がまだいる現代詩フォーラム
春の泥
春の泥
あなたにはたくさん友達いるけれどあなたの目には私は不在
いいひとを演じながら雛祭り才能なければただの小娘
忙しい人だと知りつつ春の泥だから好きになりたくなかった
嫌いです裏返せば憧憬の未練の残る春の宵の香
優しさを勘違いした日溜まりの胸に一枚うすごおりある
友人が増えるごとに春の水増量オーバー流して泣かして
固いだけパンくずのよう言の葉をこぼして散らす愚痴をグチグチ
2012年02月26日
捨てたはずなのに・・・
ひとことに昔の恋が騒ぎ出すまだ好きなんだまだ好きなんだ
ねむらないよるを偲ばせたあなたのよこに知り合いの彼
適当にあしらう筈があしらわれ宙ぶらりんに逆さに吊られ
水槽に捨てたはずの沈殿物が透明に輝く彼女と彼氏
思い出が美化されてゆく二十五時夜について語らう二人
2012年02月05日
不在の国
不在の国
悲しみに飽きてしまえば面倒な君ごと捨てる愛だの恋だの
どこまでも翻弄された歳月に太陽と月は もう巡らない
幸せな記憶の底に君不在 乾いた砂漠 そこが君の場
困らない 君が消えても変わっても 僕の世界は 無限に広がる
2012年01月27日
煙草と栞 3
煙草と栞 3
わたし今 君に恋文書いてるの 好きと嫌いの皮肉をまぜて
辛辣な言葉もなくて私達うまくいってる うまくやってる
誰とでも指切りげんまん出来る手を憎んで泣いた日々が可愛い
まだ好きだ なんてメールが来る毎に 読んで楽しむ私は不在
難解な恋愛小詩が届く度 あなたが潜む私のケイタイ
「お前のことムカつく時もあるけれど」続きを言えない君が大好き
恋心メール受信する夜は見せてはいけない涙を送信
アイシテル電波が届く二十四時あなたの肌にアクセスしたい
一夜きり一夜きりっていうけれど あなたの夜は千夜一夜
恋してはならぬ煙草の似合う人 私は栞みたいな薄さ
2012年01月24日
煙草と栞 2
煙草と栞 2
本を繰るくちづけシーンに栞ごとあなたを閉じる瞼が熱い
イニシャルを同じリングに刻んでは独りで嵌める親指小指
ディオールのハーレンハイトの香りから思い出だけがくゆりと煙る
悪戯にはしゃいだ日々を引き出して写真の人はさようならの君
好きですと真っ正面から言えたなら中毒になるわ煙草と君に
指が好き長い煙草を挟むよう私に触れた遠い指先
愛読者あなたが好む恋愛詩そこに私の居場所はあるの
秘蔵書に挟んだ栞押し花に色ありますか薫っていますか
あなたの目いつも虚空を見つめてるそこから私はみえていますか
秋晴れに紅葉が紅くなる前に栞に挟んだ新緑の恋
煙草と栞 1
煙草と栞 1
欲しい人煙草好きの詩人さん愛読書にはいつも栞が
教会の鐘が響くの草原で私の隣に空白の人
煙草吸う指に光るプラチナが私の胸を紅く切り裂く
お揃いのペアリングなど持ってない近くて遠い憧れの人
運命が絡まっていた 赤い糸宇宙の誰かに切断された
愛してる昨日の言葉は今日の嘘 君のすべてが今日でおしまい
街角で見かけた君の隣には背丈も似合う小さな女性
そんな顔して笑うんだ微笑む君はよそ行きの顔
好きなんだ 過ぎた季節にメイプルが色付き始める秋は嫌いよ
あなたの名千回呼んでも振り向かない千一回めがもう呼べなくて
君の指いつも煙草を挟んでる私のこともどこかに挟んで
2012年01月14日
花占いとうたつかい
花占いとうたつかい
花占い好きか嫌いかよりわける残酷な私と男と恋と
美辞麗句並べてみてもおいつけぬ綺麗な歌の裏には棘が
うたつかい聞いてくださいこの声を既婚のくせに好きだよ 好きだよ
少女と実験室
スカートをたくしあげたるその夜に一輪挿しの赤い花咲く
理科室に飾られている孤児(みなしご)の瓶に映る私の秘密
星々の悲しみ
星々の悲しみ
茜雲追って躓く泣いた日に頬を零れる流星ひとつ
夜空にも見えない星がひとつある あなたがいない あなたがいない
吹きさらす暗闇の彼方に手を伸ばし掴んだ星は嵐という名
2011年12月04日
恋愛ごっこ
さっぱりと切った髪を弄っては軽くなった過去にサヨナラ
手折られる花一輪の哀しみを抱いてふるえる冬の陽光
ねぇ夏美 恋って冬至を越えれるの 試して傷を幾つ数えた
初霜に蝕まれゆく花びらのようなあなたの心がみたい
この指輪あなたが噛んだ歯形です今は見知らぬ誰かの傷痕
固いなら約束なんていらないのふるえる指が欲しがるリング
哀しみを重ね塗りする悪戯を教えて重ねた罪木を崩し
囲まれた四角い部屋はいつも夜朝を遮る白い錠剤
寒空に心ひとつ置き去りに透明に濁る君への想い
愛してはいけない人と知りながら背伸びした分キスして欲しい
目を閉じて独りの夜を閉じこめる瞼は火照る君を想えば
2011年10月08日
曼珠沙華
曼珠沙華
曼珠沙華 花冠は燃え尽きて 褪せた涙を夕べに浮かぶ
紅(くれない)の冠(かん)燃え尽きぬ我が永き真夏の恋のぬけがらとして
2011年09月22日
大好きよ
大好きよ
もう少し 早く出会えば 私たち 一緒に泳ぐ魚になれた
長い指 そこに光る指輪には届かぬ愛の距離が流れる
もし君を 私が裏切ることあれば 殺していいよ あなたがすべて
街中で キスをしよう手を繋ごう お酒も飲もう 愛も語ろう
あなたより 先に死んだら ごめんなさい 私は君の 守護霊になるわ
指の間に いつも挟んで吸う煙草 そんな私にいれたらいいのに
今更に あなたを想うと泣けてくる あなたが好きよ こわいくらい
一編のあなたの詩にくるまって眠った夜が何度もあった
意地をはり優しく出来ぬ私にも 全てを認めて赦してくれた
大好きよ世界で一番大好きよ あなたがいると 私は無敵
2011年09月14日
蝶へ
悲壮とは 悲愴か蝶よ晩秋を 越えれぬ羽で私のもとへ
駕籠からは 逃れぬ宿世 嘆くなら 僕の名を呼べ 月夜の空に
羽ばたきを封じた犯人 私なら その鳥籠ごと 壊してやるから
褪せた名に 色彩添えた 貴女の名 花の名を持つ それこそが罪
届かない それくらいじゃ届かない 私を呼んだら いつだって…
さよならと 愛してるを綴る指 強く結べよ 私はここだ
どうせなら ごめんなさいより もう一度 聞きたい言葉 【愛しています】
自惚れて いてくださいね 酔うくらい 溺れているのは 昔から僕
罪咎を くぐり抜けてやってこい 包んであげる 壊れぬよう 壊さぬよう
儚さや 悲しみ憂い 脱皮して 貴女は眩しい 言葉を散らす
恋人よ 蝶に美化され 泣くならば 私は貴女を照らす 月でありたい
暗闇に 蜻蛉のように舞う蝶よ 貴女の哀しみは 僕の牢獄
(私信短歌)
2011年08月19日
幻
幻
言の葉を並べて祈る最愛の人は消えゆく音楽にも似て
とめどなく 溢れる想いメロディーに歌えど歌えど君には届かず
夏の日に 飛んだ蛍の灯火に 君はみたかい あの灯(ひ)に愛を
来世では 添い遂げようの 約束も 来世があってならの約束
人知れず 君の名を書く 君を呼ぶ 姿形も白紙のノート
また会おう またっていつなの どこでなの 黄泉路は私独りで逝くわ
最近の私は悲劇で喜劇なの 自分の余命玉響の音
詩はかかない 詩は書けないの だから今 死を書いてるの 死を書いてるの
招き猫 招いてください あの夜を ブルーノッテの薫るあの女(ひと)
さよならと言ったあなたの始発駅はじめましてが冷たい終着
真夜中にあなたをさらった 犯人は 哀しく泣いたカムパネルラ
嘘を塗り 罪を纏い 泥濘に 足掻きながらも 僕には君だけ
世界から弾かれたのは鎮魂歌 モーツァルトは いまだ眠らず
2011年07月23日
ケイタイ
ケイタイ
暗闇に 携帯の灯り チカチカと 目を刺す孤独 冷える指先
人恋し 携帯叩く 親指の 先から先へ あなたは消えて
教えない あなたにだけは 教えない メルアド メル友 今の顔さえ
会いたくて 無言電話は 真夜中に かけては消して かけては消して
声すらも 昔のままの 君なのに 今は遠くの マネキンの口
お揃いの ストラップをした 王冠と十字架が隔てた 貴族と愚民
携帯の灯りだけのみ あなたとの 距離を縮める 胸のともしび
充電器 熱くなるほど 君慕う 火傷をしても 寿命が消えても
過去の傷 見せるくらいの恋をして あなたは捨てた 赤い携帯
2011年07月11日
狂態
鏡から狂態晒す 私の身 辱めてよ 視線の矛先
愛してる 愛してなくても 抱けるなら 理屈はいらない それだけでいい
まだ胸に 花びらの痕も 無いままで 乳輪だけが 赤く泣く夜
首だるく 髪を散らして くねる腰 夏の夜は 女の薫り
溜め息と 吐息を吐いて 足して割る 方程式は 答えを持たず
独り寝の そばに君が居たならば なにもいらない 言葉を封じて
濡れた髪 手櫛で上げて また上げて 溜め息の分 時計は進む
汗ばんだ 肌が絡まる オーガズム 顔がみたくて 細目をあける
淋しいの 体じゃなくて 心かい 問うあなたは 何も知らない
日曜の 夜は早くも 眠り往く 男の闇が 女を揺さぶる
刺青を 施すように 愛撫した あなたが描いた 般若の仮面
2011年07月06日
笹舟にのせて
終焉に出来ない恋を笹舟に 乗せて果て往け 彼方まで
流れゆく この魂とこの身体 たどり着けない 貴女の海に
未練という 文字 短冊に書き写し 笹の葉ゆれて 私もゆれて
死にたいと想うくらい 焦がれても 漕げないオールを掴んだままで
雨粒が 脳裏を濡らす暗闇に 昔の君が 零れ溢れて
会いたくて 僕だけずっと会いたくて 君は離れた 悲しい距離に
悲しみを 笹舟に乗せ 流しても 流してみても 沈んで崩れ
2011年06月09日
さよならの君
はじめから 特に意味などない恋を まことしやかに 信じた徒花
足跡をかき消すように 逃げ惑う 二人の間に 芽生えた裏切り
愛してる の言葉の重みを 赤薔薇に 託して逃げる さよならの君
朝露も 濡れない昼に 侵されて 色あせて行く 乾いた涙
手を伸ばし 手を翳してみても 届かない 揺らぐ炎は 幻想のまま
きっと泣く きっと裏切る そんな事 知ってるつもりで 交わした約束
もう一度 知らない顔で 罵って お前も違う男を探せ
恋なんて しない女を 気取るには キャリアと趣味と実力兼ねて
あの人が気になりだしたの あなたとは全く違う 素直な人なの
手を握り 砂辺で歩く足跡を 満潮の波に 遠く消されて
2011年05月02日
時経てば・・・・
時たてば過ぎゆく人の無情さよ知りつつ恋を望むは愚か
人恋しい恋し人らを捨ておきて我はゆくなり自分の道を
指先で孤独をなぞり泣き明かす私は女哀れなくらい
さようなら疑似恋愛のおつもりで遊ぶのならば我に暇なし
時たてば春は来ると言うけれど凍える閨に春 便りなし
過ぎゆきて振り向くことも無い人とわかっていながら信じた嘘たち
2011年05月01日
倦怠と微熱
春雨の憂いにも似た倦怠が 濡らして止まず 強請るくちづけ
行間の隙間を指でなぞりつつ あなた探しに 開いた詩集
花曇り 繭に覆われ うずくまる 私は小さな地球の小部屋
車道すら 見捨てられた 線定規 棒線グラフに 収まらない道
鏡台に映った夜が続く昼 紅いルージュは寂れた小箱へ
日は暮れて タイムオーバー ゲームオーバー 私はひたすら歩いたメロス
大声で叫んだ恋を 拾っても 粉々に潰す さよならの君
誰のために 詩をよむ意味に 迫られて 息苦しさにあがいた私
惨めさと薄っぺらさと 儚さと 足して二で割る剥離する脳
書きかけの文字がゆらゆら 立ち上り 青空からは私の溜め息
2011年04月19日
生と死の狭間に濡転がって
生と死の狭間に寝転がって
日が昇り ラジオから流れる 放送を 掻き消すような 草刈りの女(ひと)
青空に 快晴と描く 正直さ 登校生徒に 割けない時間
山裾を 目にしてみれば 若桜 季節の軌道に遅れた私
洗濯や 布団干しに 追われても 私の今は 誰にも負えない
光射す 汚い部屋にも 光指す 埃にまみれて 質問された
毎日を安穏と暮らす私など 鬼と罵れ 東北の人
窓からは 夕暮れ見えます 茜空 多くの犠牲を 払った空に
生きてきて 沢山友人 死にました 動けぬ私を 責める魂
水いっぱい 飲めない人と同じ血が 流れていると 知りたくない夜
年取れば 夢を描くなと いう人の 夜の予言を キャンバスに描く
さようなら 何もしないで暮れる今日 おやすみなさい 明日も振り出し
お前など 死ねばいいと 呪詛の札 明け方までも響く嬌声
2011年04月07日
こぶし
こぶし
五分咲きの こぶし一本(ひともと)山裾に 握りし冬を虚空へ放つ
こぶしより放たれた冬の塊(かい)ひとつ 溶けて空の泡となる
2011年03月03日
忍び愛
忍び愛
踏み出せば行方も知れぬ恋の道危うき事は覚悟の上で
君想う君に捧げし詠み歌よ夜露に濡れて文字も流れて
知らずとも君 居ぬ側の淋しさよ枕を涙で濡らす徒花
2011年02月26日
2011年01月04日
お正月と愛犬
お正月と愛犬 初春の 挨拶もせず 二度寝する 雲行き怪し 私と陽光 大晦日 金はり見栄はり 障子はり 鬼嫁迎える 準備はオッケー 大晦日 良く乗り越えて 元日に 細く長くの年越し蕎麦で 夕暮れの陽射しのような眼(まなこ)開け 最期を迎えた 元朝の犬 捨て犬よ野良犬よと言われても 私の家を守った神犬 朝露に額冷たく 愛犬の 頭を撫でた午前五時半 終夜フィラリア咳を出し終えて お前はやっと楽になれた2010年12月02日
憎悪
憎悪 はじめから やり直します 人生も そう言えたなら 要らない包丁 金ばかり 送ってくれる 弟よ 私が親を始末するから 不幸者 不合理 理不尽世の中を 滅多刺しにした 嵐の夜明け 黙す老い 語れる老いの逝く道を 徒花が照らす最期の娼婦 拾っては 捨て行くさだめの詩人なら 奈落の底まで 彼岸に埋めよ 嫌いだよ 地雷のような罵声すら あげれなくなる 父母の逝く道 言葉とは 都合の良いこと 限りなし 美しくもあり 醜きもあり さようなら 頭に烈火の彼岸花 朱き炎は鎮魂を知らず 業深し 供養供養の毎日で 子殺し許せよ 明日は親をも 父母の 産むだけ生んだ 家政婦は 芋をかじり 死に逝くさだめ 詩人など 片腹痛い戯れ言を 思い込ませて散った徒花 枯れ薄 手招きしている 黄泉の国 我を想いて返り見よ2010年10月25日
秋雨
秋雨 秋雨が森を静寂(しじま)で包むようあなたの声が耳に降る午後 秋雨の中に佇む女(ひと)がいて震える肩に悲泪石(ひるいせき)降る 悲しみが降り続くなら花園の棺に埋もれて眠れよ私 寂しさに名づけてくれとせがむ胸頬を伝う雨はいつも独り 夕映えも太陽も白く彩られ虚空にぽっかり秋雨は降る 静けさよ遠くでチャイム鳴る鐘の涙に濡れたくぐもる秋の日 泣かないで誰にもいえず口ごもる誰かの為に消えた雨音2010年10月24日
曼珠沙華
曼珠沙華 恋に名があれば楽になる病 蝕まれた紅 毒 死人花 朱に染まり朱に交わりて尚紅く褪せる真夏を焦がした火花 空の青やがて暮れゆく陽射しすら曼珠沙華には焼かれる宿命(さだめ)2010年10月23日
花陰の祈り
花陰の祈り さざ波をたてる音に芯は濡れ記憶は薄く壊れた硝子 指に蜜薫りに秘密しっぽりと造花ではない切り花を抱く あともなくさきもない今影を追い置いてけぼりの指にくちづけ 暗闇で開花する花に名をつけて優しく呼んだ地上の果ての名 君の目の中に映える僕はまだ輝く檻に閉ざされたまま 髪を撫で髪をなで上げ髪を梳くあなたが神に溶け出す祈り 暗闇が懐かしいと泣く子供子宮の中で暮らした二人2010年10月12日
花葬と葬列
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花葬 なんで生まれてきたんだろう地球の裏側聞いた質問 さよならと早く言いたいさよならとベッドの柵で囲まれた脳 小鳥たち囀り空は青く澄み平和な午後にスカッドミサイル 真実を映す鏡はギラギラと光る眼を十年前の私に送信 なにひとつ遺せないまま逝く人の 骸を飾る朱の彼岸花