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2013年10月22日

柳内やすこ「輪ゴム宇宙論」興味津々

輪ゴム宇宙論       柳内やすこ

 宇宙はごく細いパンツのゴムが一瞬にして悠久の時を駆けて
一周してつくられる。

 輪の本質は閉じていることである。歴史は閉じている輪の上
をたえまなく時計回りに進んでいる。従って歴史には始まりも
なく終わりもない。現在は最も遠い過去であり最も遠い未来で
ある。アダムとイブは過去の神話であると同時に未来の神話で
ある。宇宙に果てがないというのも同じ論理である。「ここ」
は宇宙で最も遠い地点である。胎児は母親にとって最も遠い存
在である。
 ゴムの本質は伸び縮みすることである。従って時間は速く進
むこともゆっくり進むことも可能である。宇宙が大きくなったり
小さくなったりするのもこのためである。ゴムの伸び縮みに
ついては後述の別次元の作用によるがまた変形することも可能
であるからまれにひょうたん形になってくびれた部分が接触し
た場合歴史の流れが8の字になり半分逆行してしまうこともあ
る。
 平ゴムの本質は表と裏があることである。従って宇宙は交わ
ることなく循環する一対の世界である。明白に二つの世界は生
者と死者の住みかである。ねじれたメビウスの輪であるからど
ちらが表なのかは定かでない。時間の進行はそれぞれの世界で
全く独立しているが魂は時間の流れを垂直に横切ることにより
互いの世界を行き来できる。

 ところで一方宇宙に果てがあるという場合がある。それは平
ゴムの幅のことを言及している。ごく細いゴムであるから宇宙
の果てはごく身近に存在している。
 ブラックホールはいたる所に存在する。白いゴムの上以外は
すべて暗黒の別次元なのだから、それは生でもなく死でもなく
無機物でもなく歴史も言葉も感情もなく輪ゴム宇宙にないもの
がすべてある完璧な別次元である。
 また歴史に始まりと終わりがあるという場合パンツのゴムが
最初に一周した時点とやがて使い古されて切れてしまう時点を
問題にしている。しかし両時点は輪ゴム宇宙外の別次元の作用に
関するものであるから我々輪ゴム宇宙の住民にはとうてい理解不
可能なのである。

                   
                 ※
 私も宇宙論に関しては、それなりの興味を持っています。だから、宇宙論のニュースや話題には
耳をそばたてて聞き入ることもしばしばです。
 しかし、こんなユニークな宇宙論ははじめてで、思わずお終いまで読んでしまった。
 そうすると、宇宙について新しいことは全くわからなかったけれど、輪ゴムについては今までと
全く違った認識を得るに至ったのです。
 それと同時に、もしかしたら宇宙は理性や科学によってわかるものではなく感触によってわかる
ものかも知れないと思いました。
 そして新しい世界に出会ったような気がします。

 この詩には何かとぼけたような感じが漂っていて、しかもどこかしら真剣なところもある、それが
この詩の魅力であると思いました。
 それは輪コム宇宙論という内容にあるのか、それともこの詩の言葉使いにあるのか、私にはよく
わかりませんが、今までにない詩の世界がはっきりと感じられます。

どんなささいなもの、どんな小さなものでもそれなりの世界をもっていて、それはみんなつながって
いるに違いないと思いました。

 

投稿者 yuris : 2013年10月22日 00:10

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