6月12日の夢(核戦争後の世界)

 新潟に午後から出張することになった。3時半発の飛行機に乗ればよいので、会社でゆっくり旅支度をする。社内には大きなタンスがあって、その引き出しにワイシャツとネクタイが入っているはず。引き出しを開けてみると、ネクタイはあるにはあったが、白地に菜の花のような色彩の黄色いチェックの縞が入っているものしかない。これではあんまりだと思う。とにかくワイシャツに着替えて、鏡を覗く。びっくりだ。首の周りに鎖国時代の長崎出島の絵に出てくるオランダ人のような大きな襟飾りがついており、さりにその上の首にもばかでかい飾りがついていて、まるでエリマキトカゲのようだ。慌ててそれらの飾りをハサミで切り取る。ズボンをはく。ウエストが急に細くなったようだ。何度もベルトをぎゅっと締め上げたつもりでも、ズボンがゆるゆるになってしまう。周りに若い女の子たちがたくさんいるので、とても恥ずかしい。
 そんな大騒ぎのあげくに、とにかく電車に乗る。核戦争があって以来、外の景色は一変してしまった。荒れ果てた砂丘の風景が広がるここが東京だなんて信じられない。汚れた長細い黒ずんだ水たまりがあり、そこに見たこともない水棲生物がうごめいている。放射能で突然変異してしまったのだろう。ぼくはほかの乗客たちにそれを指さして、「見て見て! 懐かしい! 昔の川のようだ!」と叫ぶ。
 ある駅で、暗い顔をした一人の男が乗車してくる。彼は放射能の突然変異で生まれたミュータントの一種で、うっかり何か頼み事をすると、それを成し遂げるために命まで捧げ尽くしてしまう性質があるから、気をつけなくてはいけない。それなのに同僚のWくんが彼に何かを依頼してしまったという。これは大変なことになる、と直観したぼくは、ワタナベくんをタクシーに乗せて逃がそうとする。だが、それは確かにタクシーの形をしているものの、ただの鉄の箱(なんだか棺桶のようだと、夢の中で思う)で、自力で走行することができない。電車は地下を走っているので、ほかの乗客たちといっしょにぼくはその鉄の箱に入ったWくんを地上まで懸命に運び上げなくてはいけなくなる。こんなことをしているうちに、時間がどんどん過ぎてしまう。とても新潟行きの飛行機には間に合わないかもしれないと思う。

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