7月18日の夢(泣き虫カメラマン)

 カメラマンと一緒に坂道を上ってY社のビルに行く。実際の場所とは全く違う、うらぶれた一角にクライアントのビルがある。そこで商品撮影をした後、坂道を下って二人で帰る。 
 別の日、カメラマンが納品にやってきた。35ミリのポジフィルムに、坂道をとぼとぼと歩いているぼくら二人が水彩で描かれたイラストが複写されている。両側に緑の山が描かれ、真ん中を市電が走り、犬や猫の姿もある。そして、黒いリュックを背負ったぼくの姿もちゃんと描かれているカットを気に入り、ぼくは満足して「このカットにしよう」と言う。
 だが、カメラマンが帰りかけたところで、ふとぼくは気づいて言う。「待って。このイラストでは両側に山しか描かれてないよね。でも、あそこは街の中だから、これではおかしいとクライアントに言われかねないよ。この担当者はクライアントの中でも一番厳しいと言われる有名な女性だから」。すると、カメラマンはひげ面に大粒の涙をこぼして、いきなり泣き出す。「最近、ぼくが撮影すると、もう一度こういう角度から撮影してとやり直しばかりさせられて、フィルムがなくなってしまうこともあるんだ」と訴える。ぼくはあっけにとられるが、ここで折れてもクライアントにどうせやり直させられるのだから、また同じ説明をカメラマンに繰り返す。彼は気を取り直して、笑顔をつくり、「わかりました。じゃ、今度までにやり直してきます」と明るく言う。
 彼が立ち去った後、急にぼくは不審な気持ちになる。彼はカメラマンなのだから、このイラストの責任は彼ではなく、ぼく自身にあるのではなかったか? しかし、ぼくはそんなことを考え込むのをやめ、大量の書類を大封筒の中にばさばさとしまい込む。書類は封筒からあふれ、なかなか入りきらない。ぼくはドアをバタンと閉めて、遅い昼食をとりに出かける。

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