女子高生が突然制服を脱いで、ぼくを誘惑する。彼女はぼくを大きな喫茶店に誘った。階段を三階まで上り、奥のフロアのテーブルにぼくたちは座る。ウエイターがオーダーを取りに来たあと、はっと気がつくと、そのフロアに座っているのは不良じみた男子高校生ばかり。そして、このフロアは喫茶店のほかのフロアから全く死角になつている。リンチされる! とっさにぼくは立ち上がって、逃げ出す。階下のフロアに降りて、そこの客たちに「助けてください」と叫ぶが、誰も取り合ってくれない。後ろからは高校生たちがどんどん追いかけてくる。ぼくはエスカレーターやエレベーターを乗り継ぎ、必死でこの店から逃げ出そうとする。どうやら、ぼくが歯医者に逃げ込んだという情報が流れたらしく、高校生たちはビルの中にある歯医者に意気揚々と入っていく。ぼくは物陰に隠れてそれを見ていたが、見つかってしまった。慌てて逃げ出し、ビルの外に脱出する。道行く沢山の人々がいるが、誰も信用できないと思う。必死で駈けていくと、客を乗せて出発しようとするタクシーがいる。「待って!」と声をかけて、乗り込む。タクシーの中はホバークラフトのように広いが、天井はぶ厚い氷だ。ぼくは乗客の女子中学生たちと一緒に氷の下に冷凍されて、安全なところへ逃げ延びる。
現代詩人会のイベントに出席する。今日の講師は詩人で精神科医のS先生だ。会場はガラス張りで、そのガラスの自動ドアが開いて、フロックコートにスーツケースを提げたS先生がかっこよく登場。だが、先生はステージをそのまま通り過ぎて、客席に入ってしまう。かわりにステージでは先生の患者らしい少年たちが、ギリシャ悲劇のコロスのように集団で演技をしており、ぼくはそれに引きつけられて、身を乗り出し、食い入るように舞台を見つめる。誰かが「一色マグルの目がまんまるだぞ」と、ぼくをからかう(「マグル」はハリー・ポッターの物語で「魔法使いでない普通の人」を指す言葉)。だが、面白がっているのはぼくだけらしく、観客はどんどん帰ってしまい、客席はがらがらになる。こんなに面白いのに、どうしてだろう?
女性詩人のAさんとピアニストの宮谷さんがテレビの特番に出演するという。その予告の番組で、二人が一段ずつがひどく高くて段差のある階段を、自信たっぷりの笑顔で降りてくる。二人とも随分バッシングを受けた人たちだけど、成功してよかったなあと思う。Aさんは番組の水泳大会出演のため、大阪に滞在中らしい。チラシの電話番号を見て、彼女に電話をかける。ダイアルしながら、これは大阪の電話番号にしては桁数が少ないと思い、勝手に数字を足しながらかける。こんなことで、彼女につながるのだろうかと心配だ。
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