2月11日の夢(ドアを開けると)

 ぼくはコンサートに出演することになっていて、その出番の時間が迫っている。慌てて指定された会場へ駆けつけると、楽屋のホールはがらんとしていて、ただ一人片岡鶴太郎が立っていて、ぼくに生意気な口調で何か言う(何を言われたかは忘れた)。ともかく、ぼくはステージに通じるはずのドアを開ける。と、そこには懐かしい昭和30年頃の住宅街の手狭な裏庭が広がっている。青空には点々と雲が浮かび、周囲には日本家屋の家並みがしんと静まっている。これはいくら何でもぼくの出るステージではなさそうだ。もう一度楽屋ホールに戻って、もう一つのドアを開ける。そこはもう少し時代が新しくなった住宅街の裏庭で、さっきより少し面積が広い。気がつくと、そこには男が一人立っていて、裏庭を区切る家屋の一つの向こう側を指さす。すると、そちらから女の子たちの嬌声が聞こえてくる。この家並みの向こう側でコンサートが始まっているのだ。見ると、裏庭には二匹の大型犬がいる。一匹は普通に歩いているが、一匹は立ち上がって、ぼくにチンチンをして見せる。
 会社(とは全く違う空間だが)にいて、まだ就業時間中なのに社長が「これから飲み会をする」と言う。社長がぼくに「いいか?」と尋ねるので、「もちろん」と返事はしたものの、仕事をすぐに放り出せるわけではない。後かたづけをしているうちに、社長は詩人の野村喜和夫氏といっしょに飲み会に行ってしまった。飲み会の場所を聞いていないので、あわてて二人の後を追う。隣の部屋との仕切の襖を開けると、知らない男が電話をしている声がする。慌てて閉めて、別のドアから出る。出たところに、別の知らない男がいる。慌てていたので、スリッパの片方が脱げてしまう。そのまま玄関に行くと、自分の靴が見あたらない。慌てて、片足スリッパ、片足はだしのまま外へ出ようとする。玄関は段差になっている。高さ2メートルくらいだ。こんなの降りられないと一瞬ひるむが、周囲で老人たちが平気でそこを降りていくのを見て、ぼくも勇気を出して降りる。左手に長いタクシー待ちの行列がある。しかし、いくら探しても、社長たちの姿はない。
 ぼくのすぐ前に、巨大な木の幹がある。灰色に変色していて、うっかり触るただけで、その木肌に傷がついてしまう。樹木に傷をつけてはいけないと思うが、なんとなく面白くて、今度は意図的に触って傷をつける。そこは洞窟の中で、周囲の壁は木肌とそっくりの灰色の岩でできている。突然、ざざっと音がして、壁の一部が崩れ始める。ぼくが木肌に付けた傷が、洞窟全体に波及したらしい。今度は天井が崩れだした。大慌てで洞窟の外へ脱出する。すると、外には青空が広がっていて、のんびりとした山間の観光地の風景があるだけだ。人々も何事もなかったように、普段通りの生活をしている。これは一体どうしたわけだろう? ぼくは慌てた自分を恥じて、もう一度、洞窟の中に引き返す。

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