コーヒーと食虫植物

 何かの帰り道、誰かに左の肩に注射をされる。まあいいや、と思う。
男がぼくにコーヒーをおごってくれるという。もう乗っている列車があと5分で駅に着くのに、飲む暇
があるだろうか。列車の中でコーヒーを売っている男は、「もう濃いのしか出せません」と言いながら、カウンターに置いた四角い容器の中で、泥のようなコーヒーをかき回す。結局、「あまりに濃すぎて出せません」と言う。
 駅に着き、ほかの人より早く、一人だけバス停に行って並ぶ。外国のような感じ。突然、左肩に違和感を覚える。見ると、食虫植物のようなものがぼくの肩にはりついている。もぎとってももぎとっても、肌に張り付いた部分がはがれず、まあ、後で取ればいいや、と思う。

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