お茶とタクシー

 新しい仕事が入ったので、地方都市にある某社に打ち合わせに行く。妻と、某詩の研究会のH氏、会社の同僚のIさんとぼくの四人で出かける。
 打ち合わせは某社の12号館でということだ。そこに行くため、駅でタクシー乗り場に並ぶ。タクシーを待つ間に、ぼくはお茶を買おうと、一人で列を離れる。ところが駅の中にも、外にもあったはずの自動販売機はすべて撤去されている。なぜかぼくは裸足で、駅の周辺の土の露出した地面を一周するが、自販機は一台もない。駅の中に戻ると、湯飲みで熱々のお茶の無料サービスをしている。それを飲めばいいのにと自分でも思うが、飲もうとはしない。某社に着いてから自販機で買えばいいと思う。
 タクシー待ちの列に戻ると、いつのまにか列は長くなっていて、駅をぐるりと一周している。ぼくの前に並んだ見知らぬ女性が列に並ぶ人々を見渡し、「みんな三井生命の営業の人ばかりだ。一人が○○人顧客を持っているとして、某社には3600人の顧客がいることになる」とぼくに言って、列を離れる。
 やっとぼくらの番が来て、タクシーに乗る。そこへ大型バスが後ろから突進してくる。ぼくらのタクシーは衝突を避けるために急いで発進するが、その間にさらに別のタクシーが後ろから割り込んではさまれる。三台は互いに接触しながら、ガガガガ・・・と街頭のさまざまなものをなぎ倒す。降りてみると、あたりはまるで竜巻が通ったあとのような惨状だ。
 再び駅に戻る。タクシー乗り場も大変な惨状で、ビニールシートで覆われており、タクシーではない車がそこをびゅんびゅん走っている。これでタクシーに乗れるのだろうかと不安だが、「タクシー乗り場が再開されましたよ」と、係のおじさんが叫んでいる。どうやら、今度こそタクシーに乗れそうだ。

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