3月25日の夢(血肉化した沖縄)

 ぼくは沖縄の新聞社へ記者として派遣された。そこには本土からもう一人、女性詩人が先に派遣されていて、ぼくは彼女の隣にデスクを構える。彼女はぼくに新聞社の資料室から借り出した資料を大量に渡し、それで記事を書くように言う。
 新聞社の先輩記者たちは、皆本土から来たぼくたちをうさんくさく見ている。ぼくらが資料室から大量の資料を持ち出したことに対し、貸し出し書を書くようにと、ぼくに書類を渡してくる。それを持って彼女のところに行き、そのことを話すが、彼女はほかのことに夢中で、ぼくに耳を貸さない。
 沖縄の先輩記者たちは、ぼくが沖縄のことを何も知らないと思っているらしく、ビル内にある映像を使って沖縄の実情を紹介する施設へ、ぼくを連れて行く。ぼくは既に何度も沖縄を訪れて、その実態を知っているつもりだが、黙っている。施設では沖縄の置かれている現実が映像と共に体験できるようになっている。
 その体験を終えて、デスクへ戻ると、ぼくの左腕に沖縄の土と石がこぶのようにくっついている。肉に食い込んでなかなか剥がせないが、しばらくしてその半分を剥がすことができたので、それを記者たちに見せに行く。それを見た記者たちはそれまでの態度を改め、ぼくを好意的に評価してくれる。それでもまだ、ぼくの左腕には沖縄の石と土が肉体の一部となって、食い込んでおり、もうそれは二度と剥がすことができないようだ。

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