8月4日の夢(横浜へ走る)

 会社をぼくはしばらく休んでいて、久しぶりに出社した。女性詩人のH、男性詩人のTと共に、横浜へ出かけようとしていると、携帯が鳴った。出ると、最近知り合ったフィリッピーナの女性だ。用もないのに長話になる。この女性はきっと良からぬ商売をしていて、あわよくばぼくを誘おうとしているのだろうと思う。「じゃあね」と言って、話を終えるが、「切」のボタンを押し忘れていると、まだ相手も切っておらず、また話が続いてしまう。どうも、できれば切りたくないと思っているらしい。試しに、また「じゃあね」と言ってから、切らずにおくと、彼女はやっぱり自分からは切ろうとしない。
 そんなことをしているうちに、横浜に早く出かけないと遅刻してしまうことに気づく。一足先にTに出かけさせる。ぼくは出かけることを上司に報告しようと、自分のオフィスに行く。オフィスは学校の教室になっていて、担任である数学の教師が授業の真っ最中だ。ぼくは前方窓際の行動予定表のところに行き、自分の行き先を書き込む。担任が「どこへ行くのか」と尋ねるので、「横浜へ」と答える。また「何があるのか」と言うので、「数学の催しがあって」と答えるが、担任が数学の専門家なので、これでは嘘がばれるなと思う。慌てて「数学的なものとピアノとのコラボレーションの催しがあるのですよ」とテキトーに言い直す。「そうか。それなら、行かなければしょうがないな」と納得してくれた。
 あと30分しかない。さあ、急ごう。Hがぼくの前を走っていく。Tの姿は全く見えない。
 いつのまにか、ぼくは子ども時代の名古屋の実家付近を走っている。道路の右側に沿って、細長く畑ができていて、そこに最近何かの種をまいたばかりらしい。子どもたちが盛んに畑仕事をしている。この上を走って、種をほじくり出してしまってはまずいな、と不安になる。ふと見ると、すぐ前を長ネギの束を持った女性が走っていく。あれはHだろうか。ぼくは女性の顔がみんな同じに見えてしまうたちなので、本当にHかどうか自信がない。勇気を出して話しかけてみると、やはりHだった。「Tは?」と尋ねると、「あの人はいつも速いのよ」と答える。それにしても、ここはぼくの自宅の近くだから、こんなところを二人で走っているところを家族に見つかってはまずい。そのことをHに注意しようと思うが、言い出せずにいるうち、突然世界が変わった。ぼくはいきなり全く見たこともない場所に放り出されていて、面食らう。見回してみても、Hも見失ってしまった。ぼくはひとりぼっちで、西も東も分からない。

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