見知らぬ駅

 夜、仕事仲間のOさんと何かのイベントに行ったのだか、食事に行ったのだったか。とにかく、何か不都合があったらしく、そのまま帰ることになってしまった。Oさんは「かえってごめんなさいね」とぼくに謝罪し、先に立って、どんどん駅へ歩いていく。当然二人でいっしょに帰ると思ったのだが、改札口で姿が見えなくなってしまった。
 見回すと、全く知らない路線の駅だ。車道の左と右に上りと下りのホームが分かれている。路面電車の停留所という感じだ。一体、ここは何という駅だろう? おまけに路線図も掲出されていない。そのかわりに、ファイルがあって、一人の男の乗客がそれをぱらぱらめくっている。それを「見せてくれ」というわけにもいかないので、改札の駅員に「小田急の成城学園に行くには、どこで乗り換えるのがいいですか」と尋ねる。駅員は「うーん、個別の話か。難しいなあ」と言ってから、「○○と××で乗り換えかなあ」といかにも自信がなさそう。ぼくはあきらめて「では、タクシーでどこかの山手線の駅に行って、そこから新宿へ出た方がいいでしょうか」と、質問を変えてみる。すると、駅員は急に自信のある声で「いや、それはないでしょう、絵を見てください」と答える。絵? そんなもの、どこにも掲示してないじゃないか。ぼくは「じゃあ、いいです」と言って、腕時計を見る。まだ9時前だから、どんなに時間がかかっても10時半までには家に十分帰れるだろう。
 駅を出て、庭園のようなところを歩いていく。ここは見覚えがある。確か以前、先輩のK編集長とここを通ったことがあったと思い出す。

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