6月30日の夢(東シナ海)

 ぼくは最近、昼間の勤務を終えてから、夜になるとシンガーソングライターのTの所属するレコード会社に出入りするようになった。ぼくの作詞した詞の一つが彼女の楽曲に採用されたからだ。フローリングしたオフィスのそこここにテーブルと椅子が置かれ、沢山のスタッフが三々五々集まって打ち合わせをしている。ぼく一人が所在なげに立って、歩き回っている。部屋の一番奥に行くと、よく見知った顔の男が一人、椅子にかけている。会社でも一時同僚だったIである。彼はぼくの顔を見て、「おやおや一色さんもここで仕事するようになるとは」と冷ややかに言う。
 別の男性スタッフが、カードをいっぱい四角いトレイに載せて持って来て、ぼくに「あなたは何のカードをお持ちですか? そのカードはこの中にありますか?」と尋ねる。ぼくはトレイの中のカードを調べるが、そこにぼくのカードはない。慌てて自分の周囲を探すが、見つからない。そのうち、「そうだ。ぼくのカードは定期券兼用だったのだ」と思いつき、ズボンのポケットを探って定期券を取り出す。
 ぼくは作詞家としては「東シナ海」というペンネームを名乗っている。確か、以前は「櫂」という名前を名乗っていたこともあった。スタッフたちはぼくに、東シナ海というペンネーム以外一切の経歴を章かにしないようにと釘を刺し、ぼくも承知をする。
 それから、ぼくは洋服のサイズを測られる。そのとき、ぼくはズボンのジッパーが外れて、閉まらないままであることに気づく。部屋中を歩き回りながら、何食わぬ顔をして、ジッパーを締めようとするが、どうしてもうまくいかない。

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