9月7日の夢(絶望した男)

 不況だ。街は絶望におおわれている。現代ではないらしい。戦前の古い街並みだ。そこへ絶望した男が一人、叫びながら走ってくる。いったん通り過ぎて、また叫びながら戻ってくる。絶望のあまり何をするかわからない。人々はてんでに逃げ散る。ぼくも路地裏に走りこむが、男の目から身を隠しきれない。道路に伏せてみるが、男と目が合ってしまう。
 不思議なことに、ぼくと男は意気投合して、市電を一台借り切り、それを会場に男が常盤津をうたう独演会を開くことにした。一回目はお客が集まらず、大失敗。でも二回目は超満員で大成功だった。ぼくは白い大きな犬と肩を寄せ合い、喜びにひたる。すぐに男もやってきて、犬を中心に男が左、ぼくが右で肩を寄せ合う。男は「これだけ成功したんだから、次は結婚したい」と言う。「誰と?」と、ぼく。それから、ぼくはふと思いついて言う。「そういえば、この犬の飼い主は中学の先生をしている女性だった」。男は「中学の先生かあ・・」と希望に満ちた顔で言う。

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