1月13日の夢(南洋の島で)

 日本が占領をしていた南洋の島で、ぼくは2階建ての建物に暮らしている。いくつもの部屋があり、それぞれの部屋に数人の外国人の捕虜と、ぼくたち日本人が生活する。もちろん、ぼくらが監督役で、捕虜たちはぼくらに従わなければならない。この捕虜収容所には特殊なルールがあり、1日ごとに一階と二階の住人が交替することになっている。窓の外には美しい海が広がっている。
 ところが敗戦の日がやってきて、建物の中に暮らしている住人は同じなのに、今度はぼくたちが捕虜で外国人が監督役になった。立場は入れ替わったものの、部屋割りは変わらない。しかし、1人2人と住人たちは姿を消していく。帰国したのか、それとも処刑されたのか。
 ある日、一階からぼくを呼ぶ、詩人のN氏(故人)の声がした。しかし、ぼくは降りて行かない。翌日、下へ降りてみると、もうN氏の姿はなかった。誰も行方を知らないと言う。ぼくは昨日降りて行かなかったことを悔やみ、二階で泣く。
 それから何年かが過ぎ、再びぼくはその地を再訪した。もうそこには美しい海もなく、住人たちもいない。周りの風景はすっかり変貌している。ぼくは大声を上げて、涙を流す。

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