4月11日の夢(銀座大停電)

 銀座に新しい社屋ができて、ぼくはその二階で仕事をしている。若い男女の社員がデスクを連ねていて、ぼくは左奥から二つ目の席だ。6時が終業時間だが、誰も退社する者はいない。みんな忙しいのだろう。ぼくは6時40分に一人タイムレコーダーを押す。そこには長方形の小さな鍋が火にかけてあり、中で水炊きがぐつぐつ煮えているので、蓋を取る。外から帰ってきた女性社員がぼくを見て、「あっ、店長。私もどうしようかな」と笑いながら言う。ぼくが水炊きを食べたと思ったらしい。ぼくはそれには答えず、そのまま退社する。しかし、今「店長」と呼ばれたということは、ぼくは知らないうちにここで一番偉い地位に出世していたのだ。それも部長というような人事管理のポストでなく、実務のトップであることが嬉しい。
 外へ出ると、なんだか銀座の様子がおかしい。ビルと路面を結ぶエスカレーターは三本あるが、動いているのは上りの一本だけだ。ぼくは一番左のエスカレーターを歩いて降りる。それはまるで巨大な石段のように見える。銀座の交差点は暗く、信号さえ消えている。だが、昭和を思わせる電灯の明かりだけはついていて、戦後の夜のような雰囲気だ。大停電が起きているのだろうか。ぼくはまだ社内にいる社員たちにそれを知らせるべきか迷うが、そのまま帰路につく。照明が消えているので、いつもの地下鉄の入り口は見つからず、べつの入り口から階段を下りる。地下道はもっと暗いのかもしれない。はたして地下鉄は動いているのだろうか。人々は既にパニック状態におちいっている。

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