11月29日の夢(箱を見失う)

 久しぶりにカメラマンとピアノコンサートの取材をする。グルダが屋外で演奏するという珍しい演奏会だ。カメラマンは昔ながらの6×6のカラーポジで撮影する。ポジの中に会場に生えていた樹木を撮影したものが二枚あった。木肌に緑の苔が生えた様子が、それぞれ男と女の顔に見える。とても珍しいので、ぜひ誌面に使いたいと思う。そこへ前編集長のK女史が嵐のように乱入してきて、ポジを皆に見せながら演説を始めた。彼女が立ち去った後、ポジを見ると、顔のように見える樹木のポジの一枚の真ん中に穴があいている。
 クライアントの原発会社に用もないのに出かける。同社のオフィスはまるでローマのコロッセウム遺跡のように、屋外にある。広報部の前のロビーは業者でいっぱいだ。持参した書類入りの段ボールをうっかり床に置くと、人ごみにまぎれてしまった。遠くにそれがあるのを見つけ、人ごみをかき分けて行ってみると、もうそこにはない。さんざん探し回るぼくを見て、顔見知りの他社の営業マン二人が捜索を手伝ってくれる。「この箱じゃないですか?」「いや、そんな大きな箱じゃない。段ボールですよ」。しかし見つからない。二人は「ここへ来たら、まず最初に担当者へとにかく渡してしまった方がいいよ」と忠告してくれる。
 最後にもう一度探してみようとロビーに戻ると、そこでは「月の砂漠」の歌をバックに能が舞われていて、みんなが見学している。その邪魔にならないよう、ぼくは腰をかがめた姿勢でロビーを一回りする。やがて能は終わり、人々はどやどやとオフィスの外に出て行く。ぼくも帰ろうと思う。すると、今まで知らなかった外への出口が、オフィスの奥と側面に開いていて、その坂を下ると街へ出られることが分かった。街には商店街があり、食堂街になっているが、まだ昼食の時間には早すぎる。

カテゴリー: パーマリンク