過去の大作映画を新藤兼人監督が新たな演出と編集でリメイクし直した新作推理映画が完成間近である。ベースには過去の映像がそのまま使われているので、星由里子ら往年の名女優も若いままの姿で出演している一方、新しく撮り直された部分ではゆずのメンバーや、TやKなどぼくの知人も参加している。ぼく自身もオフィスの白板に「NHKに行く。22時まで」と嘘の予定を書いたまま、この映画に巻き込まれることになってしまった。出がけに棚の荷物を後輩が落としてしまい、それが発火しそうになるが、うまくぼくが受け止めて難を逃れる。
さて今撮影されている港のシーンでは、海の中を沢山の消防車が隊列を組んで走り、その後ろを大量の血のようなものが追いかけていく。色彩が鮮やかで、美しく迫力のある画面だ。港の後方を振り返ると晴れ上がった夜空が見えるが、前方は昼間なのに青いスモークで深い霧がかかっている。その霧の奥から貨物列車が驀進してくる。貨車ごとに積まれているのは木製の大きな看板のようなもので、それを演出したのは黒澤明監督だという。次のシーンでは由緒ありげな古風な日本家屋が写される。その建物はがちゃんがちゃんと音を立てて、壁や窓が移動して別の建物に変わっていく。日本の伝統的な建築様式であるらしい。
映画には沢山の名優が出演しているが、ぼくには誰が誰だかよくわからない。既に亡くなった俳優の出演場面では、壁に投影された影法師だけで表現されているシーンもあり、上手い演出だなと感心する。
不意に電話がかかってくる。受話器をとると女性が早口でまくしたてて、聞き取れない。もう一度かかり直した電話を星由里子に渡す。電話の相手は星に自分の名前は「赤」だと名乗る。この「赤」という言葉をキイとして、事件は一挙に解決に向かっていくのだ。
撮影が終わり、ごみごみした料理屋で打ち上げが行われる。長老詩人のN氏が訪れるというので、狭い部屋から広い部屋へと移動して待ち構えるが、なかなか現れない。誰かが「この部屋は撮影中、Tが使っていた」と言う。ぼくは「出演者の中には自分のことを名優と自ら誇る人もいるが、彼女はけっしてそういう自慢をしない。むしろ自分には実力がないと思っている。だけど、彼女の歌は天才的に上手いんだ」と、みんなに力説する。
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