6月1日の夢(電車の中で)

 上京して駅で中央線の電車を待っていると、先輩詩人のS氏がやってきて同じように電車を待ち始めた。二人ともうつらうつらとして夢を見ている。一人の中年サラリーマンについての夢だ。
 電車が到着し、二人はラッシュアワーの群衆に巻き込まれ、もみくちゃにされながら車内に押し込まれる。しかし幸いにして、すぐ近くにS氏がいる。ぼくは「先ほど見た夢の中のサラリーマンはすごかったですね」とS氏に話しかける。S氏はしばらく黙っていたが、「うん、すごかった」とぽつりと言う。二人とも同じ夢を見ていたのだ。
 しばらくして電車は空き、ぼくらはゆったりとベンチ式のシートに座る。S氏は突然「ところで君に貰った二冊の詩集はずっと持っていた方がいい?」と尋ねる。ぼくは当惑して「ええ、そりゃあ持っていてほしいですよ」と答える。だがS氏がずっと沈黙しているので、「無理だったら捨ててくれてもいいですけどね」と寂しく答える。

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