大学の詩のサークルの同僚だったHくんと50数年ぶりに再会する約束で新幹線に乗っている。車両の中で振り返ると、列車の後ろから猛スピードでオートバイが追いかけてくる。今にも衝突しそうだ。息をのんで乗客たちが見つめるうち、警察が何か手を打ったようだ。オートバイから二つの車輪が外れて転がり出し、オートバイは見る間に後退して視界から消え失せる。同時に列車の後ろを映していたスクリーンも消えて、何事もなかったように、新幹線は目的地の駅にすべりこんだ。
Hくんと待ち合わせていたのは、大河の中洲の砂地と草地が交互に点在する川原だ。約束の時間に行くと、Hくんともう一人の男が草の上に寝転んでいる。見ると、かつてのアイドル御三家の一人で、最近芸能活動50周年を迎えたG・Hである。そういえばHくんは昔からG・Hと親友だったのだ。
ぼくはHくんに「お久しぶり!」と声をかけるが、さすがにG・Hに気安く挨拶するのはためらわれて黙っている。しかしG・Hはぼくが空腹であることに気づくと、すぐにそこを立ち去る。そして大きなお椀いっぱいに錦糸卵をちりばめた手作りのスープを持って現れ、ぼくに食べるようにと勧めてくれた。とてもおいしい。
ぼくはHくんに「ぼくはHくんとの思い出は鮮明なんだけど、実はHくんがどういう人かよく知らないんだ」と話しかけるが、気づくとそばにいるのはG・Hだけで、Hくんの姿が見当たらない。見回すと周囲は大平原で、点在する林の間に牧草を食べる牛たちの姿があるが、Hくんはどこにもいない。G・Hも「Hくんはどこへ行ったんだろうね」と言う。