ぼくは囲碁専門誌の編集部にいる。デスクの下に本が積み重ねてあり、それが先輩の席の方にはみださないかが心配だ。なんだか無言で怒られているような気がして、本を急いで引っ込める。
退社しようとすると、電話がかかってきた。受話器をとると女性の声で「一色さんですね。ソコロフの言葉はいつ書いてくれるのですか」と言う。傍で男の声もしている。ぼくは「うちの雑誌は囲碁の専門誌です。ソコロフの記事は載せられません。第一、いつそんな原稿を書いてくれたのですか。出してほしいなら、今すぐメールで送ってください」と答えて、電話を切る。
編集部を出ると、納屋のような部屋がある。ドアを開けると黒い子猫が足元にいて、しつこくぼくに飛び掛かってくる。子猫がちびなので、ぼくに被害はないのだが。