ホテルのトイレに入って、おしっこをする。ズボンのチャックから突き出しているのは、太い半透明のプラスティックの管だ。その管を通って流れ落ちた尿はまず和式便器に溜まり、そこからあふれ出して階段を流れ落ち、一階下の廊下を流れて、突き当りの壁の右にあいた穴から、どこかへ消えていく。トイレって、みんなこういう設計だったっけ? と戸惑う。
そのプラスティックの管はぼくのものではない。返さなくてはいけないのだが、とにかくどこかに隠しておこうと、廊下をうろうろする。とりあえずゴミ捨て場に隠して、ほっとしたぼくは自分の部屋に行こうと思う。エレベーターホールで二人の労務者ふうの男と擦れ違う。その一人が突然ぼくの上着を指差し、「あっ、どこかで見たと思ったら、あれは俺の上着だ」と叫ぶ。ぼくは慌ててエレベーターに乗り込み、その場を逃れる。
ぼくの部屋のあるフロアに着いた。そのとたん、ポケットから緑色をしたボールが転がり出した。扉のあいた部屋の中にいた小さな男の子がそれを見て、「あっ、あのボールはぼくのだ」と叫ぶ。そんなはずはないが、ボールははずんでさらに他の部屋に飛び込む。どの部屋もドアがあいており、どうやらどの部屋も他の客でいっぱいで、ぼくの居場所はここにもないらしい。