外国の雪山に登ろうと飛行機で出かけた。同行者は仲間のカメラマンだ。彼と雪の積もった道を並んで歩く。途中、三叉路があった。そこには視界を遮る障害物があり、ぼくより先に行くカメラマンを見失うが、多分こちら側だろうと左の道を選択する。だが気がつくと、彼の姿は見当たらない。しかたなくさらに先に進むと、雪の上に突き出た岩場に大勢の登山客が群がって休憩している場所に出た。カメラマンに連絡をとろうと携帯をかけるが、あいにくここは圏外だ。しかたなく山小屋のようなホテルに一人で引き返す。
ホテルではフロントで中国人観光客たちが手続き中で、なかなか順番が回りそうにない。ふと気がつくと、かたわらに置いたはずのリュックがない。ホテルの従業員にありかを尋ねると、彼は「しまった。あれは雪解けまで返ってこない」と叫ぶ。
ロビーに入ると、一人の作家が座っている。彼は「食事もお菓子もすべて予約したんだが、そのチケットを失くしてしまった」と嘆く。ぼくは「私は荷物を失くし、パスポートも往きの切符も失くしました」と答えるが、ふと気づいて「あれっ? 往きの切符を失くしたのに、なぜぼくはここにいるんだろう?」と自問する。そこへ女性従業員が来たので、慌てて後を追いかけ、「トイレはどこですか?」と尋ねる。