ぼくは青いジャケットを着ている。我ながら妙におしゃれだなと思う。街を歩いていると女性詩人のHさんに出会う。「私、今〇〇賞を貰ったところ」と言う。肝心なところが聞こえない。「えっ? 何の賞? 合唱コンクール?」と聞き返すと、「違うわよ。詩の賞よ」と言う。しかし周囲では女子高生たちが賑やかにおしゃべりしていて、Hさんの声が聞こえない。
垣根の扉を押して、お店に入る。座敷になっていて、10人ぐらいが座布団で座れるいい雰囲気のお店だ。朗読会に使ったらいいなと思う。いつも大声で元気よく話すHさんなのに、今日は妙に声が小さく、容姿もスリムでおとなしいので変だなと思う。
大きな紙袋を持って会社に戻る。同僚たちにおみやげのお菓子を配ろうと思うが、古くて破れた紙袋しか手元にないので断念する。
隣の席の同僚が「『ピアノの本』の部数が足りませんよ」とつっけんどんに声をかけてくる。驚いて「ぼくのオーダーが間違っていたということ?」と問い返す。「そうよ」と相手は言う。隣席にいたのはやさしい男性だったはずなのに、いつのまに交代したのだろう。怖くて意地悪そうな老女に変わっている。ぼくはしかたなく送付リストをチェックして、寄贈先の人数を減らすことにする。