11月20日の夢(谷川俊太郎さんとの対話)

 自宅の近くを歩いていると、谷川俊太郎さんに誰でも質問できる会が開かれているという。興味が湧いて、会場のマンションの会議室へ行く。

 さすがに人気詩人らしく、質問希望者の列がぐるりと円を描いている。「一色さんだ」という声がするので見回すが、知った顔は見当たらない。靴を脱いで部屋に上がり、谷川さんと対面する。年齢のせいか憔悴した顔は、右半分が左に比べて小さく縮んだようだ。

 「ぼくが入社してすぐ、谷川さんの翻訳による『マザーグースのうた』がうちから出版されて大ヒットしましたね」。谷川さんとそんな思い出話をいくつもしているうちに、疲れたのか彼はふいと向こうへ行ってしまう。そろそろ潮時だなと思って、引き上げることにする。参加者が脱いだ靴がぐるりと円を描いて並んでいる。いくら探しても、その中にぼくの靴が見つからない。

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