3月5日の夢(お葬式)

 ついに戦後詩の巨人A氏が亡くなった。今夜8時からの葬儀に駆け付けられるよう、取材を代わってもらう。電子ピアノのユーザー取材である。女性社員のWさんが「一人で行ってもいいです」と言ってくれたが、商品知識のない彼女では何を質問したらいいかさえ分からないだろうと、不安だ。
 葬儀の会場に早めに着いた。大広間にはさすがに大勢の詩人が集まっている。外の運動場のようなところに受付があるらしいので、行ってみる。山のように何かが地面に積み上げられた向こうで何人かの若い男性が受付をしている。「お香典はここで渡していいのですか」と尋ねて、封筒を彼に渡すと、「千人針をいつやるか奥様に聞いてください」と言われる。そういえば、つれあいは連れてこなかったのだ。「ぼく一人で来たから、自分でやりますよ」と言い、針を受け取る。それで死者の遺髪を縫うのが決まりなのだ。だが、ぼくの手の中でA氏の遺髪は複雑に絡み合って、解けそうにない。
 大広間に戻ると、長身の二人の男性がいて、ぼくに「お久しぶり」と言って握手する。一人は有名詩人のT氏だが、もう一人は知らない男性だ。ぼくはT氏が握手してくれたものと思い込み、感激するが、どうやら話しかけたのはもう一人の男性らしい。ちぇっ。こいつは誰だろう?
 いよいよ読経が始まったので、そちらへ移動する。そこへまたもや見知らぬ眼鏡の、いかにもオタクっぽい男性が現れ、「合体ロボットのいいアニメを録画したから、ぜひ見てください」とぼくを別室に連れて行く。思わずついていきかけるが、皆葬儀会場に行ってしまい、大広間はもぬけのからだ。慌ててぼくもそちらに向かう。

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