4月11日の夢(水底に沈む人々)

 ぼくは山の上にいる。見晴らしがよく、下にある町が一望できる。ものすごい風が吹きすさんでいて、いろいろなものが吹き飛ばされていくのを、ぼくはみんなと指さしながらなすすべもなく眺めている。風の中で右往左往する人々も見える。
 いつのまにか町は青黒い一面の水におおわれている。その水底に黒い蛙の卵のように沈んで、風が吹く度に思い出したように揺れているもの。あれはみんな町の住人たちだ。
 町を滅ぼしたものと対決するため、ぼくらは老賢人の指揮のもと、町の寺院に向かう。老賢人を演じるのは、かつての「詩学」の名編集者・嵯峨信之さんだ。ぼくらは魑魅魍魎と闘い、勝利を収める。だが、これは現実ではなく、街頭で演じられる群衆ドラマらしい。左前方で肩にプロジェクターをかついだ男性が、寺院の壁に太陽が昇ってくるシーンを映し出し、ぼくらはそれに向かって勝鬨を挙げる予定だったが、男性は間違えてドラマの一部始終を早回しで映し出しただけだ。かたわらにいた進行係の詩人N氏が「違うよ。朝日の昇るシーンだよ」と注意するが、男性は彼の言葉を理解しないまま、太陽の昇る前のシーンで上映を打ち切ってしまう。N氏は男性に「わかってる?」と尋ねるが、結局「わかってないみたいだな」と苦笑するだけだ。

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