10月9日の夢(気象予報士のお姉さん)

 気象予報会社へ取材に行く。二階で応対してくれた予報士のお姉さんは目が大きくてとてもかわいらしい。彼女はカードをぼくに見せ、「ここの灯台にいる男性に尋ねると詳しく教えてくれますよ」と言う。「今から行かれますか」とすぐにも紹介の電話をかけそうなので、ぼくは「ええ、できるだけ早く」と答を濁す。そこへ妻がやってきた。美しいお姉さんにちょっと嫉妬している様子だ。お姉さんは急にそれまでの他人行儀な様子をやめて、「一色さん、あたし、歯が痛い」と頬を押さえて訴える。「親知らずですか」と聞くと、そうだという。「それならいい歯医者があります。でも、会社に診察券を置いてきてしまったので、戻ったら電話しますよ」と答えて、妻とともに階下へ降りる。
 玄関はいつのまにかお客でいっぱいで、沢山の靴で足の踏み場もない。いくら探しても自分の靴が見つからない。けれど、どうせこれは夢なんだから、いいやと思う。
 ともかく外へ出て、港から船に乗る。着いたところは四国の海岸の街だ。中年の男がバスから降り、一人で選挙演説を始める。地上には全く人がいないのに、建物の二階以上の窓やベランダには沢山の人がいて、「頑張れ」などと応援を始める。人だけでなく、何頭もの馬もてんでに窓から首を出す。ぼくは妻に「ほら、馬もいるよ」と指をさして教える。
 道路に長机を出して、その男性と先ほどのお姉さんが並んで座り、選挙運動はさらに熱を帯びる。お姉さんはギターの弾き語りで、歌い始める。机の上には二つの装置があって、右の装置を押すと「もっとやれ」という合図。左の装置を押すと「やめろ」という観客の意思表示になる。妻はつかつかと出て行って、ためらわず左の装置を押す。しかたなくお姉さんは歌をやめるが、頬には悔し涙が流れている。
 翌日、妻は街角でぼくに「今日は午前と午後に行くところがあるから、その間に二時間ほど昼寝しましょう。何人ぐらい入れる部屋があるかしらね」と言う。ぼくは「どこの街で?」と尋ねる。妻はちょっと首をかしげて考え、「でも、あのお姉さんはあれから熱が出ちゃったから、イベントの一つは中止になるかもしれないわね」と答える。
 それからぼくらはぼくが昔一人で住んだことのある古いアパートの部屋を訪ねる。大家のおばさんがちょうど掃除をしているところだったが、構わず入り込む。ぼくはベッドの上をのそのそ歩き、妻は窓から道路に降りて、そこにある書棚を点検する。書棚は四つあり、どれにも結婚披露宴の紅白の式次第がぎっしりと詰まっている。ぼくは妻に「向こうの二列はぼくのじゃないよ。手前の二列だけがぼくのだよ」と教える。

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