11月24日の夢(魔女の背骨)

 海外から帰ってきた友人のことで、ある医者のオフィスを訪れる。待合室で待っていると、既にその友人の女友達がオフィスで医者と交渉を始めているのが見える。女性詩人のHさんだ。ぼくも彼女と同じ交渉のために、ここにやってきたのだ。急いで二人に近づいて挨拶し、医者に名刺を渡そうとする。しかし、どのポケットを探ってみても、出てくるのは他人の名刺で、自分のものは一枚もない。そこで、このオフィスの会議室の書棚のところへ、二人を連れて行く。書棚にはぼくの会社の出版物がいっぱい並んでいるはずで、この本を出した出版社の者だと自己紹介するつもりだ。ところが、その書棚にはぼくの会社の出した本は一冊もない。呆然とするが、しかたがないので、とにかく自己紹介をしてから、ぼくは一歩下がり、Hさんの交渉を見守る。
 だが、医者は老かいでなかなかこちらの言いなりにならない。そこでHさんは医者を脅かそうと、突如床に横たわって、呪文を唱えた。彼女は魔女だったのだ。そして、まるでベルトを取り外すようにして、自分の背骨を取り外し、ぼくに手渡す。大きな鰺の背骨のようなそれは、彼女の体温で焼けるほどに熱い。ぼくの隣で、医者は恐怖にぶるぶると身をふるわせている。しかし、ぼくがそれを彼に手渡したときには、気をとりなおして「ぼくも医者で、慣れてますから」と、平然とした風を装う。次にHさんは何かの内臓を手渡してくれる。それはココアの粉末をかけたケーキのようで、ぼくの手の中でぽろっと崩れてしまう。ぼくは「ぎゃっ」と慌てるが、Hさんは平然としている。

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