9月11日の夢(銀の椅子)

 広い食堂にいる。懐かしい声がするので振り返ると、後ろのテーブルに元編集者の大西さんが銀色の椅子に座って、女性と話している。大西さんはぼくの詩集「純粋病」の編集者だが、とうに世を去った人だ。女性は後姿なので、誰だかわからない。
 電車に乗る。車内は比較的すいているのに、ベンチを独り占めして寝ている男性もいて、ぼくの座る席がない。壁際にちょうど腰かけられる凹みがあるので、ぼくはそこに落ち着く。
 降りる駅が近づいたので、荷物をまとめようとする。箪笥があって、ぼくの荷物はその前に洗濯物のように散らばっている。怖そうな男性がやってきて、黙ってぼくを見つめる。どうやら彼も降りるのだが、その荷物が箪笥に入っていて、ぼくの荷物のせいで取れないらしい。ぼくは焦って洗濯物をかき集めようとするが、うまくいかない。その騒ぎの中で、ぼくの大切な印鑑がどこかに失われてしまった。
 電車の後ろにはロープにつながった銀の椅子があり、そこにはまだ大西さんが座っている。椅子はお堀の水の中を電車に引っ張られて疾走しているが、どんどん水中に沈んでいく。このままでは大西さんは溺れてしまいそうだ。

カテゴリー: パーマリンク