4月19日の夢(火事と暴動)

 日本海側の港町にある会社にぼくは就職した。社長はまだ若いが、ワンマンである。幸い、ぼくは彼に気に入られたようで、最初に在籍した広報部から販売促進部に転籍させられた。
 社長はなぜか社員に絵を描くように勧め、会社の中に美術部を作っている。しかし、クラブ活動はこれ一つしかなく、社員全員が美術部の部員でもあるのだ。そして、彼らの作品を織物にして、バスルーム兼トイレに飾っている。
 ぼくの後を追うように、広報部から中年の男性社員が販売促進部に転籍させられた日、会社が火事になった。ぼくらのいる本社棟は大丈夫だったが、工場や店舗などのすべてが灰燼に帰した。これでは経営が成り立たなくなるのは目に見えている。ぼくの見ている前で、社長は腹心の部下に、「これからリストラする社員を選り分ける」と言う。そして、バスルームにあった織物を一つ一つ選り分け始める。社員に美術を勧めたのは、このためだったのだ。
 ぼくがその腹心の部下の男に火事の原因を尋ねると、「ある若い女子社員が会社から受けた理不尽な仕打ちに絶望して、窓から身を投げた。その体が地面に落ちると、そこから火が起こり、瞬く間に全社に燃え広がった」と、ぼくに打ち明ける。その話の間、男は小部屋の中にぼくの体を押し付けるようにして、ささやく。ぼくの後ろに掃除婦のおばさんが押し付けられて、身動きがとれず、さらにその後ろを掃除のおばさんたちが迷惑そうにすり抜けていく。
 リストラ社員の選別を終えた社長は、社員の一人に「店舗が燃えてしまったから、新しい店を開ける場所を探しに行け。その間も少しでも商品が売れるように、チリンチリンと手でベルを鳴らしながら、行商するんだぞ」と指示している。
 ぼくはこれらの真実を皆に明らかにしようと、美術部の部室のドアを開ける。ぼくから真実を聞いた社員たちはきっと暴動を起こすに違いない。

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