朝食をいつものカフェのモーニングサービスで食べたいと外に出る。角を曲がって店を覗くと、表にはシャッターが半分降りていて、若いマスターが暗い顔で椅子に腰かけているのが見えた。お店が倒産したのだ。ぼくはしかたなく回れ右をして家に戻ろうとする。
途中の道端で人だかりがしている。見ると、道路わきに水は流れていないが、溝になっているところがあり、その窪地に古着が何着も捨ててある。それを近所の人たちが拾い上げているのだ。ぼくの見慣れた緑のセーターやズボンもある。ぼくもそれらを拾い上げる。
帰宅して「ぼくの洋服が捨ててあったよ」と言うと、妻は「それはもう古くなったから処分したのよ」と答える。「なんだ、そうか。じゃあ、近所の人たちはまだ着られる服があると思って、拾っていたんだね」と、ぼくも応じる。
飼っている白猫のすずがやってきたので抱き上げる。だがすずはそれを嫌って、ぼくの胸から床に飛び降りる。そこにはたまたまいろいろ荷物が置いてあったので、それに正面衝突したらしく、バシンッとすごい音が響く。驚いてすずを見たが、さすが身の軽い猫らしく、けろっとした顔でぼくらを見ている。ぼくと妻は「すず、気をつけなくては駄目だよ」と猫に注意をする。